果物は「果糖で太る」「朝食べるのがいい」はウソ!? 管理栄養士が「果物の食べ方」に喝!
では、制限を必要としない食事にふさわしい糖質とは何なのだろう。足立先生の研究によれば、身近な糖質である「ぶどう糖・果糖・砂糖(しょ糖)」の中では、「果糖」がもっとも血糖値が上がりにくいとのこと。
果糖が含まれる代表的な食品といえば果物だが、果物の種類によって含有量が異なるため、足立先生はさまざまな果物で血糖値の上昇率を計測してみたという。対象となったのは、「キウイフルーツ緑肉種160g」「りんご皮付き130g」「オレンジ180g」「みかん180g」「パインアップル150g」「バナナ100g」。その結果、「どの果物も食後過血糖を起こすことはありませんでした。ただ、上昇率はそれぞれ異なり、血糖値の上昇を大幅に抑えられたのは、果糖と食物繊維を多く含むキウイやリンゴです」(足立先生)。
キウイは摂取量を2倍に増やしても大きく上昇することはなかったそうで、「よく言われる『果物は果糖があるから太る』『食べすぎは良くない』というのは、誤った説であることが証明されました」とのことだった。
ただ、注意が必要なのは、スポーツ飲料などに含まれる「果糖ぶどう糖液糖」。とうもろこしから取れるでんぷんを酵素分解して果糖を加えた人工の液糖のため、大量に摂取すると食後過血糖を起こしやすいそうだ。「動脈硬化性疾患予防のガイドラインでも、生鮮食品である果物の摂取は推奨する一方で、果糖を含む加工食品の摂取は減らすことが望ましいとされています」(同)。
なお、果物の栄養面に着目した実験も行ったそう。おにぎり、サラダ、ゆで卵という栄養素に偏りのあるコンビニ食にキウイをたった1個プラスすることで、ビタミンや食物繊維、カリウムなどの栄養素が30%以上増加し、1食分の栄養摂取推奨量をほぼ満たすことができたという。足立先生は、「このように果糖の多い果物は、血糖値の上昇を抑えつつ、不足しがちな栄養素も補えるんです。いつもの食事に手軽にプラスして食べるのが望ましいと思います。健康のために何かを“食べない”という引き算ではなく、何かを“食べる”という足し算をすべき」といい、理想的とされる1日の果物摂取量の半分にも満たない日本人の果物摂取量の少なさに警鐘を鳴らしながら、積極的な摂取を勧めた。
「勘違いしている人もいるかもしれませんが、“血糖値を上げてはいけない”わけではないんです。というか、食べて血糖値が上がるのは当たり前。上がらなければ生きていけませんから(笑)。意識するのは、“食後過血糖にならない上昇率で抑えられるかどうか”なんです。糖質制限のように引き算の食事ではなく、足し算で健康的になるズルい食べ方を考えてほしいと思います」という足立先生の言葉で、講義は終了した。