「大金払って中学受験させる意味って?」公立出身の母が、成績不振の息子に抱く疑問とその答え
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
言うまでもなく、中学受験は“どうしてもやらなければならないもの”ではない。これは、わが子に中学受験を経験させようとしている母も、十分すぎるほどわかっていることだ。わが子が勉強好きとは思えず、もちろん閃く天才肌でもなく、勉強への集中力も続かず、勉強習慣も根付かない……そんな現状を憂う中学受験生の母たちは、よって次にこのような思考に覆われがちだ。
「中学受験はやめよう」
お金もかかる、時間もかかる、神経も使う。土日もなく、塾の課題に追われる日々。小学生にこういう毎日を与えることが本当に良いのだろうか? という疑問と葛藤が、母の心に湧き上がるからだ。
せめて、わが子が「どうしても、この中学に行きたい!」という具体的な目標を持ち、努力を重ねようという気概を見せてくれるのであれば、母もこれまで通り、最大限の応援をし続けると決意を新たにすることもできようものだが、こういう子ばかりではない。勢い余って、わが子に「やる気がないなら、(中学受験を)やめなさい!」という怒りを直接ぶつけてしまうことになりやすい。
しかし、不思議に思われるかもしれないが、筆者の長年の取材を通して見ても、親に「やめろ!」と言われ、「願ったり、叶ったり!」状態で「はいはい」とやめる子はいない。多分、子どもには子どもなりの理由、例えば、「一度目指したものを親に独断的に言われたくらいで放棄したくない」とか、「友達は受験するのだから、自分だけが今更リタイアできない」とか、単純に「勉強は嫌いだけど、塾は楽しい」とか「志望中学には行きたいけれど、目の前のゲームの誘惑についつい負けてしまう」などの理由があるのだろう。ゆえに、「やめなさい!」→「絶対、やめない!」という親子の言い争いに発展していくのだ。
母の立場からすれば「だったら、やることやれよ!」ってことなのだが、生まれて10年ちょっとしかたっていない子どもに対して、自己コントロールを求めることは、思うよりずっと難しいことなのだ。よって、一部の出木杉君と出来杉ちゃんたちを除き、大部分の子どもたちが大なり小なりの親とのバトルを繰り広げて、受験本番に突入する。