コラム
【連載】オンナ万引きGメン日誌

勤務中にラブホへ行ったバツイチヤンママ保安員! 「変わった人が多い」万引きGメンの素顔

2018/05/12 16:00

 私自身も何度か経験していますが、指名手配犯や薬物所持者、また社会的地位の高い人を捕まえたり、事後強盗被害に遭うなど、結果として大きな事件になってしまった時には、新聞やテレビで報道されることがあります。それを誇りに思う職員は多数存在しており、ステルス(スーパーなどの現場で保安員であることが絶対的に見破られないという意味)の異名を取るおばあちゃんGメン(当時78、故人)も「あたしは3回も新聞に出たことがあるんだ」と、ことあるごとに自慢していました。

 その記事は、“食料品などを万引きした公務員が女性警備員に捕まった”というような内容なのですが、よほどうれしかったのでしょう。自分の名前すら出ていない小さな新聞記事の切り抜きを、汚れないようパケ袋に入れて財布に忍ばせ、いつも持ち歩かれていたようでした。30年以上にわたる現場勤務を終えた彼女は、引退後まもなくご逝去されましたが、このような小さな誇りの積み重ねが、仕事を継続する力につながっていたのかもしれません。

 現役終盤、腰を悪くした彼女は、ステッキを片手に背中を丸めて歩くようになり、カートを利用して巡回していました。傘をかけるリングにステッキを刺して、背中を丸めてカートを押す姿は、どこからどう見ても近所の老婆にしか見えません。そんな彼女が得意とするのは、その特性を最大限に活用した接近戦でした。常習者であっても彼女が保安員であることは見抜けず、彼女の目の前で実行してしまうのです。

 たとえ相手がガラの悪い若者や外国人であっても、ひるむことなく声をかけてしまう彼女でしたが、受傷事故は一度も経験していませんでした。腰の曲がったおばあちゃんに、自分の愚行を咎められると、図らずも戦意を喪失してしまうのでしょうか。長年にわたって高い検挙率を維持してきたことが頷けるような話ですが、なかなか真似のできるものでもありません。

 その一方、大量の化粧品を万引きした中国人らしき女性に腕を噛みつかれて、取り逃がしたことを報道されたおじさんGメンは、みんなからバカにされていましたね。相手が女性であったことはもちろん、ただ逃げられるだけでなく、商品まで奪われてしまったからです。たとえ犯人に逃げられても、ブツだけは取り返す。それがプロの仕事なのです。

(文=智美、監修=伊東ゆう)

最終更新:2018/08/28 11:39
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