神戸の近隣トラブル「砂かけババア」が逮捕! それでも「解決は難しい理由」を弁護士が解説
ネット上で「神戸の砂かけババア」と呼ばれている人物を知っているだろうか。この“砂かけババア”とは、神戸市北区にあるマンションの2階ベランダから、1階の住人に砂を投げつけるなどの暴行を加えた疑いで逮捕された、島田八千代容疑者を指す。報道によると、島田容疑者は、長年にわたって近隣トラブルを巻き起こしていた“モンスター住民”で、周辺住民に砂だけでなく暴言やツバを吐きかけ、洗濯物に水や尿を撒くなどの悪質な行為まで確認されている。さらに何かを叩きつけるような金属音を出すといった騒音問題まで起こしていたという証言もある。
こうした事件は、これまでにも世間を騒がせてきた。有名なところでは、奈良県の“騒音おばさん”。CDラジカセからユーロビートやヒップホップなどの音楽を大音量で流し続け、また「引っ越し、引っ越し」などと絶叫しながら布団を叩くという騒音トラブルを巻き起こし、2005年4月に傷害罪の容疑で奈良県警に逮捕された。また、昨年には、神奈川県の“サバ味噌ぶちまけ女”も大きな話題に。早朝から大音量でテレビ番組や音楽を流し、それを注意した住民の玄関に、サバの味噌煮をぶちまけるといった嫌がらせを行ったのだ。女性は、こうした行為を咎めようとした男性に車で衝突、さらにボンネットに乗せたまま運転を続け、殺害しようとした疑いで逮捕された。
証拠がなければ、警察は動かない
こうした近隣トラブルに遭遇した人の心境を考えれば、モンスター住民の一刻も早い逮捕を願わずにいられないだろう。しかし、報道によると、島田容疑者は実に15年以上にわたってこうした行為を繰り返していたとされている。なぜ近隣トラブルは長期化してしまったのか。弁護士法人ALG&Associatesの山岸純弁護士に話を聞いた。
「近隣トラブルは、通行の問題、隣地との壁の問題、隣の家が見える窓の問題、隣地から伸びてきた枝の問題など、さまざまな要素があります。そこで民法では、第209条から第238条にかけて、例えば『(隣地の使用請求)第二〇九条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない』『(雨水を隣地に注ぐ工作物の設置の禁止)第二一八条 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない』など、ある程度の“目安”が規定されています」
近隣トラブルは、たいていの場合“民事の話”として捉えられることから、「“民事不介入”の原則の下、警察もなかなか解決に身を乗り出せない(乗り出したくない)」とのこと。また、「映像などによる証拠を確保しなければ、警察は動かない」ため、逮捕までに時間がかかったという点も否定できず、今回の件では、住人が“島田容疑者から砂を投げつけられる映像”を入手できたため、逮捕に至ったと考えられるという。
「暴言・騒音は、その“映像・録音”がないと、なかなか立件(事件にすることが)できません」という山岸氏。「暴言があったとしても、侮辱罪や名誉毀損罪を構成する言動に至るのは、なかなか難しく、また、騒音は、騒音が原因で心因反応などの精神的傷害を被った、というあたりが立証できないといけません」という。また、「逮捕される/逮捕されない」の線引きに関しては、「物を投げて、それが人にぶつかり、ケガを負ったという事実があれば、警察も動きやすいのでは、というところでしょうか」。