コラム
「元極妻」芳子姐さんのつぶやき25

松山刑務所の脱走犯は逮捕されて「ほっとした」!?  元極妻が語る、受刑者が逃亡する心理

2018/05/06 16:00

 Hさんが窃盗を重ねたり、脱走を思いついたりした時に、「やめとけ」と言ってくれる人がそばにいればよかったのですが、そういう人間関係には恵まれなかったのでしょうね。

 もともとヤクザの親分の家とは、人間関係のうまくいかない人たちが集まる「場」でもありました。いわゆる「組事務所」ではなくて、親分のおうちに行けば、組員でなくても食べさせてもらえたんです。それでそのうち組員になって、悪いことをするんですけどね。『山口組三代目 田岡一雄自伝』(徳間書店)にも、戦後の貧しい時期、ごはんを食べに押しかけてくる若者たちのために、三代目の姐さんが苦労して食事を用意するお話が出てきます。

 私が現役(笑)の頃はそんなでもなかったですが、やっぱり若い衆は食べる量が違いますから、当番のコたちといろいろ工夫したものです。ごはんだけではなくて、彼女とケンカした時に仲直りの方法を一緒に考えたりしてました。

 短気なオットやカシラ(若頭、いわゆるナンバー2)に怒鳴られた若いコに、「『出てけ』って言われても、出ていかないで謝ってみて。どうせケロッとしてるわよ」って諭したりと、けっこう姐っぽいこともしてましたね。今思い出しましたけど。

■「和める場」がどんどん減っている

 最近は組事務所が機能しなくなって、姐さんたちもそういうことを言える機会もないし、そもそも若いコたちと顔を合わせないのでしょう。「和める場」がどんどん減っているから、世知辛い事件も起こるのかなと思います。

 そういえばウチじゃないですけど、親分から「出てけ」って言われて出て行った若いコが、行き場がなくてコンビニ強盗をやらかして逮捕された事件もありました。侠(おとこ)の世界ですから、もちろんそういうこともあるのですが、心細い時にそばにいてあげるのが、姐さんの務めなんです。

 まあ、あんまりしゃしゃり出ると、「めんどり(女性、そして極妻のことですね)がうるさい組は長持ちしない」とか「出しゃばり」って言われちゃいますから。こう見えて、(元)極妻もいろいろタイヘンなんですのよ(笑)。

最終更新:2018/05/06 16:00
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