コラム
長期不倫ルポ「私たちってヘンですか?」

W不倫20年、「妻バレ」しても関係続行――急逝した彼の妻に抱く「罪悪感」

2018/04/18 21:00

 20年近く不倫の取材をしてきたが、このところ「長期不倫」の話を本当によく聞く。短くて8年、あとは12~15年くらいが多い。独身の場合は「子どもがほしい」「結婚したい」気持ちに折り合いをつけるのは容易でない一方、W不倫の女性にとっては、案外、長期不倫は合理的な関係ではないかと思う。そんな女たちの声を聞いていく。

(第1回:「出産リミットが見えて焦りが」長期不倫8年目、結婚と出産願望で揺れる38歳の岐路
(第2回:「40歳を迎えてラクになった」19歳から10年不倫を繰り返した女の、結婚・出産願望
(第3回:「産まないという選択肢はなかった」W不倫12年、“彼”との子どもを育てる女の決意
(第4回:不倫20年で「妻バレ」して破局……出産・結婚もあきらめた女が苦悩する「私の存在意義」
(第5回:W不倫15年、彼が脳梗塞で帰らぬ人に――「彼の最期に立ち会ったのは私」と語る女の胸中

 中部地方のある町に住むヒデコさん(50歳)が、妻子ある2歳年上の男性と知り合ったのは、まさに偶然だった。

「ぼんやり歩いていたのがいけなかったんですが、道ばたで彼とぶつかって。転んで足首を捻挫したんです。彼は病院に連れていってくれ、そこから時々会うようになりました」

 ヒデコさんは22歳で10歳年上の男性と結婚した。親戚の紹介による見合いのようなもので、ほとんど交際もないままに結婚してしまったという。

 不倫の彼であるユウトさんと知り合った30歳のときには、5歳と4歳の子どもを保育園に預けて仕事に復帰していた。

「夫とは表面上、波風は立っていませんでしたけど、それは私が夫に従っていたから。働きながら家事も育児も頑張っていました。夫は親の会社の跡取りでしたから、時間の自由もきくはずですが、時間があれば飲みに行っちゃう。それも仕事だと義父母にも夫にも言われていました。夫の浮気相手が家を訪ねてくることもありましたが、私がしっかりしてないからだと、義母に怒られました。なんでも私のせいなんだ、とつらかったですね」

 どうしてもヒデコさんが働かなければならない経済状況ではなかったが、同じ敷地内に住む義母がお金の管理を全てしていたため、ヒデコさんが自由に使えるお金はまったくなかった。

「子どもと出かければ、かわいい服のひとつも買いたくなるけど、いちいち義母におうかがいを立てなければいけない。それが耐えられなくて、義父母や夫の反対を無視する形で、無理やり仕事に復帰したんです」

 夫の横暴で強引なセックスしか知らなかった

 彼女にけがを負わせた彼、マサトさんは夫と違って女性の気持ちを尊重する人だった。

「本当に大した捻挫ではなかったのに、心配してくれて。家に来て夫にも謝るというから、それは断りました。私が自分で転んでけがしたことになっているから、と言って。それだけで夫婦の仲が伝わったようです。3週間ほどして最後の通院になったとき、わざわざ病院まで来てくれて『今度、快気祝いに食事でもしましょう』と。ただ、夜は私が出られないので、市内のちょっと有名なお店でランチをしようと誘われました。有休をとって、わくわくしながらランチに行ったのを覚えています。そのとき、私はすでに彼のことが好きだったのかもしれません」

 ランチは本当に楽しかったという。恋愛経験もほとんどないままに結婚したヒデコさんにとって、彼との時間は「宝物のよう」だったという。だから、「またランチを」と誘われたときも、断る気にはなれなかった。そして、この2回目のデートで、2人は結ばれる。

「ランチが終わったとき、彼から『もっと一緒にいたい。あなたのことをもっと知りたい』と静かに言われて。私も同じ気持ちだったんです。私が男性とホテルへ行くなんて、あまりに非現実的だったから、部屋に入ってもなんだかピンとこなかった。でも、彼、とても優しかった。夫は自分の欲望を満たすためだけの強引なセックスしかしませんでしたから、こんなに優しくしてくれるんだと感動して、涙が止まらなかった」

 夫が横暴なセックスをしていても、夫しか知らなければ「こんなものか」と受け入れてしまうのだ。セックスは男の欲望を満たすためのものではないのに……。

 その後、月に1度、あるいは2カ月に3度くらいのペースで2人は会った。

「彼に会うたび、私は夫から不当な扱いを受けているとわかるようになりました。同時に、彼のことをどんどん好きになっていった」

 それでも彼女は「逃げの恋愛」をしたわけではない。家のことは、それまで以上にきちんとやった。舅姑にも仕えた。もちろん、子どもたちは彼女にとって一番大切な存在。彼と会う約束をしていても、子どもに何かがあれば、子どもを優先させた。一方で、夫を裏切っているという感覚はなかったという。

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