カルチャー
『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』インタビュー・前編

「ペニバンを着けたら、自分になれた」――女という性を壊したかった「私」の衝動とは?

2018/04/09 16:00

(C)ペス山ポピー/新潮社

 そうした思いが確立したのは、のちにペス山氏が出会い系で募ったM男に対し、ペニバンでアナルを掘ったときだった。事後、ペニバンを装着した自身の姿を見て、「私、これ、めっちゃ似合ってるな!!」と爽やかにひらめいた。そして、「私の性自認は、ほとんど男性なのだと思う」と、思い至っている。

ペス山 たとえば、路上でイケメンを見ると「わたしはなぜ、こんなふうに生まれなかったんだろう」と嫉妬しますけど、きれいな女性を見ても、「きれいだと、生きるのが大変だろうなあ」と思ってしまうだけなんです。極度に「“女性”としてしか扱われない」、つまり「人間として扱われないのでは」と。ならば、そんな人生はキツイのではないか、と。反面、おばあちゃんにはなりたいです。性別から解放されていると感じるから。

――“女性”という性別そのものに、怖さを感じていたんですね。進学すると制服でスカートを着用しなければいけなくなります、どうしていたんですか?

ペス山 スカート着用に対してというよりも、小6までは男女混ざり合って遊んでいたのに、中学校で制服になった途端、男女が分かれるのがキツかったですね。制服によって“分断”された、という感覚で、悲しかったです。だからわたしは、スカートを長くしたり、下に体育ズボンを履いたりしていました。それで、スカートの留めが甘くてズルっと落ちて笑われて、「タカラジェンヌみたいで面白いでしょう?」なんてふざけたリアクションをとったり。

――わざと道化を演じるような、“面白キャラ”だったんでしょうか。

ペス山 そうですね。それには背景がありまして。小5のときが一番大変だったのですが、友達がいない上に先生が「キツかった」んです。

――「キツかった」とは、どういうふうにですか?

ペス山 先生が作曲して、みんなが作詞した「笑顔の5年B組~♪」みたいな内容のオリジナル“クラス歌”を歌わされました。さらに、先生がみんなの呼び方を決めるんです。「あなたはルミルミ。あなたはマナっち。名字で呼び捨てすることは許しません」と。わたしは性別から逃げるために名字の呼び捨てを好んでいて、友達にも「なるべく名字で呼んでほしい」とお願いしていました。“名字呼び”で過ごしていた時期は、心地よかったんですが、下の名前で呼ばれるようになってしまって、精神的な自由がどんどんなくなっていくんですよ。……さらに追い詰められた理由は、その当時“トレジャーシステム”というのがありまして。

――なんですか、それ!?

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