【オンナ万引きGメン日誌】保安員になって早10年の私、「万引きGメンのなり方」教えます!
はじめまして、保安員(万引きGメン)の智美です。この仕事に就いて、早十年。さまざまなお店で、たくさんの万引き犯と対峙してきました。これから連載という形で、私の仕事や現代万引きの実態を語っていきたいと思います。
地元島根の大学を卒業した私は、東京に住んでいた彼と遠距離恋愛をしながら、実家の近所にあるネットカフェでアルバイトをしていました。そうした生活を2年ほど続けた後、どうしても彼と暮らしたい気持ちが抑えられなくなって、後先考えずに東京に出てきたのです。彼は驚きながらも喜び、勝手に上京してきた私を受け入れてくれましたが、生活の面倒を全てみてもらえるわけでありません。
早速に、なにか仕事をしなければと求人誌を眺めていると「万引きGメン募集!」というインパクトのある見出しに目を奪われました。それは保安警備会社(私服専門の警備会社)の募集記事で、万引きGメンを普通に募集していることに驚きつつ、話のネタになりそうだなと思ったのです。彼に相談しても反対されなかったし、興味本位で応募したのが、この仕事を始めたきっかけです。それ以外に、特別な理由はありません。
面接に行くと、履歴書を渡して、すぐに適性テストのようなものをやらされました。採点の結果、その場で帰された人もいたので、意外と重視していたのだと思います。適性テストが終わると、面接担当の人から「アルコールや薬物の中毒者ではないか? 前科はないか? 自己破産はしていないか?」など、かなり失礼な質問をされました。しかし、そんな質問をするのには理由があり、警備業法で、該当者は警備員や保安員になれないと定められているからなのです。
万引きGメンは、正式には保安員と呼ばれる職業で、そのほとんどが警備会社や店舗運営会社の自社警備部門に所属しています。制服で巡回する人たちのことを警備員、私服で巡回する人たちのことは保安員と呼ぶことも、この仕事に携わるようになって初めて知りました。同じ警備業でも、警備員と保安員の仕事内容は全然違います。警備員は来店者に姿を見せることで防犯効果を発揮しますが、保安員は周囲に悟られないよう、客に紛れながら犯罪行為を現認して、被疑者(犯人のこと)の摘発をもってお店の安全を保ち財産を守るのです。
この「現認」とは、「犯罪の一部始終を目撃すること」。万引きの場合は、棚取り(棚から商品を手に取る瞬間)、自己の支配下(隠匿場所の特定)、未精算の確認(通常は店外まで追尾)の3点を確実に目撃しなければいけません。
大事なのは不審者の見極めと行動予測で、ベテランの腕利きになるとコンマ何秒の世界で万引き犯を見極めます。保安員に職人のような人が多いのは、そうした特殊な技術がなければできない仕事だからなのかもしれません。そのため「自分たちは警備員とは違う」と、妙なプライドを持っている保安員が多いのです。