「声がけが耳障り」イトーヨーカドー“トンデモお客様の声”、クレーム対応のプロはどう答える?
モンスタークレーマーに「娘を襲う」と脅されたことも
これまで、ありとあらゆるクレーム対応を行ってきた津田氏。過去には、こんなモンスタークレーマーに対峙したこともあったそうだ。
「ブックオフに勤めていた時代の話です。ある人物から、『店長の態度がなっていない、責任者を出せ』とクレームが入り、当時責任者だった私が対応したのですが、『部下の教育がなっていない』『お前は人を育てる資格がない』といわれ、『お前が人を育てられないのは、母親がお前をちゃんと教育しなかったからだ』『お前の母親は生きてるのか。住所か電話番号を教えろ。母親を説教してやる』と。さらには、『お前が娘にちゃんと教育できているか調べてやる』とも言ってきたので、警察に連絡しました。会話を全て録音していたんです。『娘を襲う』というようなことも言っていたので、『あぁこれはもう脅迫罪だ』とも感じていました。ちなみに、その人物はのちに別件で逮捕されましたが、持ち物の中に、うちの娘の写真が入っていたそうです」
こういったクレーマーにまで、親切・丁寧に対応することは「危ないです」と津田氏はきっぱり言う。イトーヨーカドーのお客様の声を書いた人物は、「さすがに、そこまでヤバい人ではなさそう」と感じるかもしれないが、企業側が生き残っていくために、「お客様の言うことは絶対」といった風潮を作ることは、同時に社員が“被害者”になる危険性を高めていると言えるのかもしれない。
「日本で異常なクレーマーが増えているのは、それだけ心のバランスを崩した人が増えたということではないでしょうか。やり場のない社会への怒りや孤独を発散させる相手が、企業なのかもしれません。お客様という立場を取れば、ペコペコする企業側は、唯一“自分の思い通りになる相手”。そんな相手に対して、企業側が“お客様の言うことは最後までしっかり聞きましょう”というのは、よろしくないと思います」
商いとは、そもそも物々交換から始まり、それがお金に代わっただけであり、「サービスを提供する側、受ける側に、上も下もない」と津田氏は語る。常識から逸脱したクレームが減るためには、企業側そして客側がともに意識を変えていくことが大切なのだろう。