カルチャー
『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』著者・いしいさやさんインタビュー
「宗教自体が悪いとは言い切れない」母親に信仰を強制された“二世信者”の苦悩
2018/03/21 15:00
物心ついた時から、エホバの活動に加わっていたいしいさん。しかし、エホバが説く終末思想や永遠の命などを完全に信じていたわけではなかったと話す。
「正直、神様と言われても、実感が湧かなかった。だから、信仰のせいで学校の行事に参加できない時は、ひたすら恥ずかしくて、つらくて、消えたい気持ちでいっぱいでしたね。それでも掟に従っていたのは、破ると母親にむちで叩かれるから」
エホバでは親に従順であることが義務付けられており、いしいさんも少しでも反抗しようものなら、すぐにベルトで叩かれていたという。
「そうでなくとも、母親に逆らって悲しませるのは嫌だなと常々思っていました。自分がどうしたいかよりも、いつも母親のことばかりを考えていたから、今でも本当の自分の感情がわからなくなる時があるんです」
いしいさんの著書『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』は、主に母親といしいさんが送ってきた日々を中心に描かれている。同書は単なる宗教の暴露本ではなく、母と娘の関係性についても考えさせられる内容だ。
「高校生の頃は、宗教にのめり込んでいた母親に怒りの矛先が向いた時もありました。その一方で、母親は私のためを思って二世として育ててきたわけですから、それを信じてあげられない自分に対する罪悪感もあります。宗教のせいでつらい思いもしたけど、母親に悪気はないわけです……まだ気持ちの面で、母親や宗教に対する決着はついていないですね」
謎に包まれたエホバの信者の日常は、知らなかった人にとっては衝撃的な内容だが、親と子とのままならない関係性については、共感を覚える人も多いのではないだろうか。
(松原麻依/清談社)
最終更新:2018/03/21 15:00