サイゾーウーマンカルチャーブックレビュー「女の敵は女」じゃない3冊 カルチャー [サイジョの本棚] 仲良し・不仲では片付かない「女同士」の関係、でも「女の敵は女」じゃない3冊 2018/03/10 17:00 ブックレビューサイジョの本棚 ひと言で「女同士の関係」といっても、そのバリエーションは無限にある。「女同士はドロドロしてる」「女の敵は女」と思っている人には見えない世界が描かれた3冊を紹介したい。 ■『いのち』(講談社/著: 瀬戸内 寂聴) 95歳、瀬戸内寂聴の小説『いのち』を読んだら、やっぱり「女同士はドロドロしている」と思う人もいるかもしれない。ただ、少なくとも寂聴にとってそのドロドロは、飛び込んで泳ぐ価値のある大河だ。 河野多惠子と、大庭みな子。ともに1960年代に芥川賞を受賞し、その後同時に女性初の芥川賞選者となった2人は、自他ともに認めるライバルだった。双方と深く交流のあった瀬戸内氏が、2人のエピソードを軸に半世紀以上にわたる交流を振り返る。「長編小説」と打たれているが、寂聴本人の目線で、ほとんどが実名で記されているため、エッセイや回想録のように読む人も多いだろう。 長年酒席を共にした友人の話を聞くような、人懐っこい寂聴の語り口でつづられるエピソードの数々は、どの組み合わせをとっても三者三様にチャーミングだ。寂聴の自殺未遂を助けた河野、病に倒れた大庭の気迫にのまれ、全速力で走った当時70代の寂聴、本人のいないところで大庭の小説を絶賛するのに、「大庭には言わないで」と口走る河野――。時に性的嗜好など、きわどい話に踏み込んでも下品にならず、老いて病に倒れても良い意味で人間くさい一面が活写されている。 深く対立しながらも、同時に文学的才能を認め合う理解者でもある玉虫色の関係。少年漫画のように爽やか一辺倒ではないが、熟成したお酒のように味わい深いものがある。本来、人付き合いは「仲良し」「不仲」とひと言で片付けておく方が楽だが、半世紀以上、どちらも入り混じったまま据え置いて関係を継続できたのは、精神的な体力があり、かつ精神的に成熟しているからこそだろう。 『いのち』という言葉は、寂聴が愛し、深く研究した作家・岡本かの子の生涯をかけたテーマとなった単語だ。おそらく寂聴の作家生活にとっても大事な言葉が冠された本書は、「早く私もあちらへ行き、三人で一晩中喋り明かしたい」「あの世から生れ変っても、私はまた小説家でありたい。それも女の」と終盤で結ばれる。いのちを削ってでも味わいたい仕事、人間関係、そういうものを私たちはいくつ紡げるのだろうか。 次のページ 女と女のさまざまな関係を描写する『完璧じゃない、あたしたち』 12次のページ 関連記事 年上女が若い女に“友情”を強いるとき――『あるスキャンダルの覚え書き』、女友達への欲望1歳の姪とルームメイトとの女3人暮らしで、「女の友情」の見方が変わりました同僚・ママ友・姉妹、怖いけど面白い“女の友情”――嫉妬も独占欲も女同士で生まれる『おこげのはなし』作者が語る、「女同士の珍妙な友情」「居場所がない女」の愛おしさ辛酸なめ子さん、どうして女性は友情を危うくしてまで友人の恋愛に口を出してしまうんですか?