育児相談室「ポジカフェ」主宰・佐藤めぐみさんインタビュー

厄介な「ヘリコプターペアレント」の実態と対策――何も決められない子どもが育つ!?

2018/03/07 15:00
helicopterparent
Photo by Toshimasa Ishibashi from Flickr

 愛情を持って我が子に接するのは、もちろん大切なこと。しかし、愛情の示し方を一歩間違えると、歪んだ親子関係が生まれてしまう。近年では、子どもの行動を管理し続ける親を「ヘリコプターペアレント」と呼び、その行動が問題視されている。では、具体的に何が問題なのか? ヘリコプターペアレントの定義や対策について、育児相談室「ポジカフェ」の主宰者として多くの育児相談を受けている子育て心理の専門家・佐藤めぐみさんに話を聞いた。

■常に子どもを管理し続ける「ヘリコプターペアレント」

「ヘリコプターペアレントは『常に子どもを観察し続ける親』と『観察され続ける子ども』という親子関係が、ヘリコプターが上空でホバリングしている様子に似ていることから名付けられました。アメリカで出版された『Parenting with Love and Logic』という書籍の中で、著者のフォスター・クライン氏とジム・フェイ氏が用いたのが始まりといわれていますね」

 子どもを常に“観察する”ことがヘリコプターペアレントの定義のひとつという。ただ観察するだけなら問題なさそうだが、特徴はそれだけではない。

「毒親、カーリングペアレントなどなど、いろいろな呼び方がありますが、ヘリコプターペアレントの最大の特徴は『過管理』と『過干渉』です。親が子どもの行動や人生に関わらずにはいられないのです。特に学業や学校に関することへの干渉が強く、学校で子どもの身に何か起きようものなら、親が自ら抗議する場合もあるようです。ヘリコプターペアレントはアメリカ発の言葉ですが、日本で生まれた“モンスターペアレント”に近い部分もありますね」


 先日放送された『ねほりんぱほりん』(Eテレ)でヘリコプターペアレントが特集され、「中学生の娘の尿採取を手伝っていた母親」「子どもと恋人のLINEをこっそり開いて確認する母親」などの衝撃的なエピソードが飛び出して話題になった。佐藤さんによれば、彼女たちのように度を越した干渉をする親は“しっかり者”であるケースが多いという。

「一見すると、しっかりしている母親という印象があるのですが、その“しっかり”が行きすぎると『この子のことは私が一番わかっている』という思い込みがエスカレートしていきます。そのため、子どもが大きくなっても干渉・管理を続けている場合が多いですね」

 ヘリコプターペアレント化するのは圧倒的に母親が多いそうだ。

「アメリカの状況は存じ上げませんが、日本は母親が育児の大半を背負っていることが多いので、ヘリコプターペアレント化してしまうようです。日本はまだまだ母親への重圧があり、その息苦しさも行きすぎた育児の要因になっていると思います」

 そのほか、親側に「こういう子に育ってほしい」という確固たる思想があり、その枠にはめたい気持ちが強いのも、ヘリコプターペアレントの特徴だとか。


「私の経験則ですが、自ら『私はヘリコプターペアレントだ』と気づくケースは少ないように思います。どこからが過干渉や過管理に当たるのかというボーダーが明確でないため、自分の行動に何ら疑問を持っていないことが多いですね」

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