嵐・櫻井翔を「ブス」「ダサい」!! “貶し愛”をするファンの特徴を、臨床心理士が解説
最近、ネットを中心に話題を呼んでいる深夜アニメ『ポプテピピック』(TOKYO MXなど)。女子中学生・ポプ子とピピ美を主人公に、さまざまな作品のパロディーやブラックユーモアを織り交ぜた、“説明不可能”な物語が展開されていく。そんな同作のファンたちは、こぞって「クソアニメ」と称賛し、ネットで大盛り上がりをしているのだが、ここである疑問がわいてくる。なぜ、自分の愛する作品を「クソ」呼ばわりするのだろうか。
こうした現象は、アニメ、またアイドル、タレントなどのファン界隈では決して珍しいことではない。例えば、国民的アイドル嵐・櫻井翔の私服姿を「ダサいw」、最近顔回りに肉がついてきたと指摘して「ブスw」などとファン同士が言い合っている様子は、ネット上で散見されている状況だ。こうした、愛するものをネガティブな表現で語ることは「貶し愛」と言われ、近年では愛情表現の1つとして、広く認知されるようになった。
貶す=強い関心を持っている
しかし、なぜこうした貶し愛が横行するようになったのだろうか。神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授である臨床心理士の杉山崇氏に、貶し愛の心理や、貶し愛をしがちな人の特徴、またネットとの関連性などについて話を伺った。
「愛情の反対は、嫌悪や憎しみではなく、“無視”なんです。憎しみは、愛情と紙一重で、どちらも対象に強い関心がある。貶すということは、つまり“強い関心を持っている”という表現でもあるわけです。特に、貶すとなると、悪い部分に注目をしていないといけないので、『自分はこれだけ深く注目している』というアピールになります。例えば、男子が好きな女の子に対して、悪口を言うことってありますよね。周りが『あの子って可愛いよね』とチヤホヤしていても、『いや、でもアツイはこういうダメところがある』と言って、『みんなが知らないことを知ってるよ』とアピールするのと同じことです」
幼い男子特有の心理と思われがちだが、杉山氏いわく「男女問わず、年齢も関係なくあります。パパやママが自分の子どものことを誰かに褒められたりすると、『いやいや、こんなダメなところがあってね』なんてよく言ったりしますが、それもまた『あなたの知らないところを、私は見てるんですよ』という心理であり、ひいては『この子は私のものよ』というアピールの場合もあります」とのこと。
また、ファンの間での貶し愛には、仲間意識を生む面もあるようだ。確かに、「こういうところが残念」「だよねだよね」と共感を得ることは、ファン交流の醍醐味かもしれない。
「ただし、熱心なファン同士の貶し愛による交流は、興味を持ち始めたファンに嫌な気分や疎外感を覚えさせる面もあるのではないでしょうか。貶し愛をする人たちは、『私だけが知っている』という優越感を持っているので、にわかファンが“撤退していく”ことに、うれしさを覚える……ということはあると思います」