「太ってる人がオシャレを楽しむ」は当たり前に? “痩せ信仰”ニッポンに変化の兆しは
――それぞれモデルを選ぶときや、誌面づくりで重視している点はどんなところですか。
清水 モデル事務所から採用するのではなく、専属モデルを誌面上で募集しているので、「ラ・ファーファ」に出るのは、つまり「今まで一般人だった人が、名前と素性をさらす」ということになります。なので、自分がぽっちゃりしていることを受け入れていて、モデルとして活動することを前向きに楽しめる人を採用していますね。ぽっちゃりしていることをネガティブに感じている人だとモデルの仕事を楽しめないし、誌面に出たことで余計に世間の目が気になるようになってしまったら、本意ではないので。
倉科 モデルの“暗さ”は写真に出てしまいますからね。うちもモデルは、明るい人、前向きな人、清潔感のある人。それ以外はないですね。「Mr.Babe」でモデルをやっている方たちはそういった意味も含めて存在感ありますよ(笑)。
清水 取り引きのあるブランドや撮影スタッフから、「『ラ・ファーファ』の子は明るくていいよね」とよくいわれます。そこがウリにもなっているので、絶対にはずせないところです。誌面でも、ぽっちゃりしていることをネガティブに捉えたり否定したりするような言葉、表現は使わないようにしています。“いまのまま”でファッションや生活を楽しめるマインドになれるように……と思ってるんですよ。
倉科 うちも「デブ」という言葉は、なるべく使わないようにしていますが、面白ければ「ポジデブ」のように使うこともあります。ぽっちゃりした男性をどう表現するかはいまだに悩み。「ポチャイリッシュ」とか、もっと日常的に使える呼び方はないかと常に探し続けています。あと「わがままボディ」もよく使っています。
清水 うちは動物にたとえてますね。「ウサギ体型(お尻がぽっこり出ている体型)」「ハト体型(上半身がふっくらした体型)」「ペンギン体型(おなかがぽっこり)」「プードル体型(全体的にふっくらしているが手首、足首が細い)」「テディ体型(全体的に丸い)」とかですね。
――読者の方からの反応を見て、太っていることにコンプレックスを持っている男女に対して思われることは?
清水 僕が何か言える立場じゃないんですけど、悩んでいる方は、自分の殻に入って周りの意見をなかなか聞けない状況になっているケースも多いと思うんです。まず、ありのままの自分を受け入れてから、周りの人にどう思われているか、両面を見てみる。周りの意見を聞いてみると、果たして自分はそんな悲しい状況にいるのかどうか、見えてくると思います。
倉科 日本中の肥満の方が芸人根性を持って、コンプレックスを前に出していけるようになれば、コンプレックスは解消されると思うんですよ。でも、現状それは難しい。僕は、こういったぽっちゃりさん向け雑誌を他社さんからも出してもらって、これがスタンダードになってもらえてればいいと思う。僕の知りうる限りでは、この2冊が男女の唯一の情報ソースになっていますよね。それくらいじゃ、固く閉ざした心は開かない。僕らが情報源として独占したいわけではなくて、こういう媒体が競合してどんどん情報を発信して、太っている人がおしゃれを楽しむことが当たり前という状況になって初めて、読者はちょっと元気を出して、自分も試してみようかなと思うようになるのではないか、と。そうなったときには、いろいろなデザインに挑戦しだすと思うし、服もどんどん売れるはず。今、プラスサイズの市場規模はまだまだ小さい。これが普通サイズと同じ程度になったらすごいことになるでしょう。