『陸王』『トドメの接吻』山崎賢人、“漫画原作モノイメージ”を払拭する2つの芝居
昨年、素晴らしかったのは『陸王』(TBS系)で見せた山崎賢人の演技だ。この作品で山崎は、役所広司が演じる老舗足袋製造工場の社長の息子・宮沢大地を演じた。工場の経営が危ぶまれる中、就活と並行して父の仕事を手伝う大地は、とても健気で好感を持った。
いままでの山崎なら、竹内涼真が演じた華のある新人マラソン選手の方を演じてもおかしくないのだが、今回の役は等身大の青臭い若者だ。池井戸潤原作のドラマを手がける製作チームは、大胆なキャスティングに定評があり、今回もイケメン俳優のイメージが強い山崎に、父親と衝突しながら成長していく若者を演じさせ、松岡修造には外資系スポーツメーカーの社長を演じさせ、見事な采配だった。役所広司世代のおじさんたちは「こんな息子がほしい」と、さぞかし思ったに違いない。山崎にとっても新しい扉が開かれたと思う。
山崎はスターダストプロモーションに所属する現在23歳の若手俳優だ。三木聡監督のテレビドラマ『熱海の捜査官』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。その後も着々とキャリアを積み重ねていき、2015年の連続テレビ小説『まれ』(NHK)ではヒロインの夫役を演じてその知名度は全国的なものとなる。
また、同時期に『ヒロイン失格』『orange‐オレンジ‐』といった映画に立て続けに出演し、「女子高生向けの少女漫画原作の恋愛映画といえば山崎賢人」というイメージがこの時期から急速に定着していった。しかし、武井咲、剛力彩芽といったオスカー系の女優もそうだが、映画やドラマに次から次へ出演していると、演技力は急激に上がっていく一方、ネットで「ゴリ押し」といわれて悪い印象を持たれがちだ。また、漫画原作の実写映像作品への出演はリスキーで、原作ファンからイメージと違うと思われると、印象が悪くなってしまう。