今井舞の「週刊ヒトコト斬り」

上野のシャンシャン公開に集まる「善意の人々」が醸す“違和感”

2017/12/22 21:00
uenozoo
上野動物園公式サイトより

――毒舌コラムニスト・今井舞が、話題のアノ人物やアノニュースをズバッとヒトコトで斬り捨てる!

◎やっぱりズレてる
 やれ低視聴率だの打ち切り間近だの打ち切りだの、「SMAP×SMAPの後番組」というだけで、いちいち話題にされてしまう、フジテレビ月曜午後10時枠。その『もしかしてズレてる?』は年内で終了。来年1月から『世界の村のどエライさん』が始まるとのこと。

 もうね。タイトル聞いただけで苦戦確実の、絵に描いたような後発模倣番組なのであるが。本来なら、始まることさえ話題にならないレベルのこれが「SMAP×SMAPの枠の後後番組」ということでまたニュースに。

 事故物件でも1回客を挟めば通常運営が可能というのが通説のはずだが。いつまでもいつまでも「心理的瑕疵枠」扱い。そこを意識させないほどに高視聴率を出す番組を作り成功すれば済む話なのであるが。『世界の村のどエライさん』じゃあ無理だろう。1回お祓いでもしてもらうか。

◎平成のパンダフィーバー
 いよいよ上野のパンダ・シャンシャン公開。公開初日、1日400組の観覧枠に当選した幸運な人々に対し、各マスコミも現地で総力取材していたが。……いやー。


 「かわいいシャンシャンを見たくてたまらない善意の人々」を撮りに来たマスコミ陣。しかし、そこにいたのは、通常なら取材クルーが避けるような、「テレビに映してはいけない人」の群れであった。いや、もちろん普通の人もいたし、そうでない場合も皆さん「善意の人々」ではあるのだが。

 「昨日の夜から並んだ」「会社は有給を取ってきた」「今日のためにカメラを新しいものに買い換えた」と、シャンシャンを初日観覧できる僥倖について語る、善意の方々それぞれの口調やテンション、観覧のために考えてきた服装なんかが……。ひえー。「見た瞬間、思わず泣いてしまいました」ひえええーーー。

 生まれたての頃の、産毛に包まれ、胎児を思わせるようなピンク色で、まだパンダの面影もない、ちょっとグロい時期のシャンシャンのリアルな等身大ぬいぐるみ(完成度高し)を作ってきて、それをマスコミにうれしそうに披露していたOL風の女性とかねぇ。外見は至って普通の美人さんなんだけど。テレビというのは、そこから立ち上る違和感というものを、確実に拾ってしまうメディアだから。ちょっと引いてるのを隠しながら「それは……?」と尋ねるレポーターに対し「ピンクピン太郎ですッ!」と答える美人さん。この時期のシャンシャンが、一部で「ピンクピン太郎」と呼ばれていたことなんて、もう誰も覚えてない。そんなこの時期のシャンシャンをぬいぐるみで忠実に再現とは。費やされたその時間と情熱。我々余人には違和感としか……。

 すべては「初日」のせいで、これから段々薄まっていくんだろうけど。しばらく上野は、“人間動物園”の様相が続くことだろう。……安心安全の動画でいいやもう。

◎話題の2人
 MC船越英一郎。ゲスト橋爪功。この2人が生放送に集うことで、何か磁場のようなものが発生するのではないかと、薄氷を踏む思いで注目された『ごごナマ』(NHK)であったが。予想と違うところで薄氷バリーン! 


 「先ほど、不適切な発言があり……」と沈鬱な表情で謝るアナウンサーに「え? 俺ぇ?」と、失言があったことすら気付いてなかった橋爪功。あの年代のお爺さんは、もう悪気ゼロで使ってた言葉だからねぇ。お陰で見事に「ほかの憂慮事項」に対する懸念は放送中吹っ飛んだわけで。めでたしめでたし。……家族はつらいよ。

今井舞(いまい・まい)
週刊誌などを中心に活躍するライター。皮肉たっぷりの芸能人・テレビ批評が人気を集めている。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)、近著に『気になる「あそこ」見聞録』(新潮社)がある。

最終更新:2019/05/21 20:27