高橋真麻、テレビに出るために「不幸でいたい」戦略の落とし穴
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「不幸でいたい」高橋真麻
『ダウンタウンDX』(日本テレビ系、11月30日)
10代の頃の高橋真麻を、私は見たことがある。
といっても、もちろん私は知人でもなんでもなく、真麻はお嬢さま女性誌「25ans」(ハースト婦人画報社)に、“俳優・高橋英樹のご令嬢”として頻繁に登場していたのだ。高橋夫妻は何度も流産を経験している。真麻を妊娠中にも、何度も流産の兆候があったそうで、英樹は子どもが無事に生まれてきますようにと、道端のお地蔵さんや、来日していたローマ法王のテレビ画像にも手を合わせるほど、信心深くなったという。そんな真麻誕生秘話が、雑誌に書いてあったように記憶している。都内の名門女子高校に通う真麻が、英樹ゆずりの鼻をカメラに向け、誌面で毎回違う振り袖姿を披露し、屈託なく微笑んでいた姿を今も覚えている。
そんな真麻が、フジテレビの女子アナとして登場し、父親が有名俳優・高橋英樹だと知れると、「あのルックスでフジに入社できるのは、父親のコネを使ったからではないか?」と、ネットでバッシングが始まる。女子アナの入社試験の倍率は数千倍ともいわれるが、たまたま有名人の娘に生まれたというだけで、そのポジションを得られることに納得がいかない人もいるだろう。
が、世の中はそんなに甘くない。授業料を払って学歴を得る学生と違って、社会人は成果をあげなければ、仕事は来ないし、給料も上がらない。各局にはそれぞれ、見ない日はないというくらい出ずっぱりの人気アナウンサーもいるが、それは逆に言うと、仕事がない女子アナも存在するということである。英樹が直々に「うちの娘を頼む」と言ったのか、テレビ局が忖度して真麻を採用したのかは不明だが、ラクをして入社すると、ツケを払わされて苦労するのは本人である。
実際、入社後の真麻は苦労したように私には見える。『おしゃれイズム』(日本テレビ系)で真麻は、「ネットで叩かれて激痩せして、可愛くないなら、細いと言われたくなった」「ラーメンの麺1~2本しか食べられず、38キロまでいった」と、精神的に相当追い込まれていたことを明かしていた。
局が特別扱いしていないと示すためか、真麻は『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)で、とんねるずに一斗缶で殴られ、熱湯をかけられていた(スタジオに英樹がいて、娘の姿を見て笑っていたが、これは「親公認のイジリであってイジメではない」というエクスキューズだと思われる)。また、お正月特番で、着付けのために女子アナが早朝に集合をかけられる中、真麻だけは顔の出ない着ぐるみを着させられ、その番組を見た真麻の母ががっかりしていたと『ウチくる!?』(フジテレビ系)で話していたこともある。
資本主義社会では、払ったカネに応じた扱いを受けるものだ。お嬢さまである真麻は、数々の特権を味わい、それが彼女自身の自己評価に影響を与えているように思う。だからこそ、女子アナを目指したのだろうが、念願の女子アナになってテレビには出られても、自尊心を破壊されるような扱いを、真麻が本当に受け入れていたかは疑問である。