サイゾーウーマンカルチャーインタビュー鳥飼茜が“女と男”を描くワケ カルチャー 漫画家・鳥飼茜インタビュー 「男はもう救いようがないと思ってる」漫画家・鳥飼茜に聞いた、“女と男”を描くワケ 2017/12/03 19:00 インタビュー 左から『先生の白い嘘(8)』(講談社)、『ロマンス暴風域』(扶桑社)、『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(祥伝社) 女を描きながらも、やはり避けては通れないのは男の存在だ。世界の半分を占めるこの「他者」を、漫画家・鳥飼茜はどう描いているのだろう。後編では「男と女」に関して、そして愛するマンガに関して、女子マンガ研究家・小田真琴が話を聞いた。 (前編はこちら:女社会の“本質”と母親という女について) 鳥飼茜(とりかい・あかね) 大阪府出身。2004年、「別冊少女フレンド DX ジュリエット」(講談社)でデビュー。2010年に「モーニング・ツー」(講談社)で連載を開始した『おはようおかえり』(講談社)が評判となって一躍人気作家となる。代表作に『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)など。女性の心の機微を描き出す力はマンガ界でも随一。現在は「SPA!」(扶桑社)、「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)、「Maybe!」(小学館)でマンガ作品を連載中。 かの萩尾望都にも激賞され、各所で話題となり、今や鳥飼茜の代表作となった『先生の白い嘘』。性の暴力性や愛することの困難を描き、最後はレイプ加害者である早藤を単純に罰することなく、被害者の感動的な演説でもって見事にまとめあげた。掛け値なしの大傑作だ。 ――『先生の白い嘘』が完結しました。最後は早藤を罰するような展開にもできたはずですが、そうしなかったのはなぜですか? 鳥飼茜氏(以下、鳥飼) 賛否両論でしたね。当初は早藤を“阿部定”的な感じにして、びしゃーって血が出て終わり、っていうラストを考えていたんです。そういうノワールっぽいものをやりたかったし、偽善的になるのだけはイヤだなと思っていたけど、結局は偽善的になってしまったという(笑)。どうですかね? ――いや、これは偽善ではないですよ! 最終盤の演説は感動的でした。 鳥飼 それは私を贔屓目で見てくれているから(笑)。エゴサーチしてますけど、だいたい4割はがっかりしてます。 ――男を赦したように見える展開にでしょうか? 鳥飼 そういう意図はないんです。「クイック・ジャパン」の特集の中でマンガ家の入江喜和さんが「鳥飼作品の魅力は、怖いぐらいダメな男性陣と、美しくて女くさい女性陣。『先生の白い嘘』の早藤や、『おんなのいえ』の川谷さんは、一見真逆に見えるけど、ふたりとも女性に甘えているという根っこは一緒」ってコメントをくださって、私はそれに衝撃を受けたんですね。私は「男はひたすら甘え倒す生き物である」というところから離脱しきれないんです。なんかもう救いようがないって思ってるんです。 ――逆に、女には救いがある? 鳥飼 女の人は自分で立ち直れる力があるんで。パートナーがいなきゃだめ、とか、スペックのいい人と結婚しなきゃだめ、とか、そういうのは飽くまでも外部の声で、攪乱されがちではあるんですけど、ほかの女の人と比べたりとか、本当は別にしたくもないんですよ。本来的には、女の人は強いって思っていて。「強い」って言うと陳腐だな……ハードボイルドなんですよ。男の人に対してそれは感じない。「お前らいつもいいとこで逃げやがって」っていう。 ――早藤を赦したわけでも罰したわけでもない? 鳥飼 早藤があそこでチンコ切られたからって、それは絵的にはスカッとするでしょうけど、例えば極悪人が死刑になればスカッとするんですかね。物理的な罰がもたらすスッキリは一瞬のことで、本質的な解決ではないと私は思うんです。死刑にしたいって気持ちはわかりますけどね。「最悪のまま生き抜く」っていう方が、罰としては意味があるのではと。 次のページ 女が身を引いた方がトクだと、経験則から気づいても納得できない 12次のページ Amazon 先生の白い嘘(8) (モーニングコミックス) 関連記事 『東京タラレバ娘』で“説教芸”に興じる東村アキコは、愚かなお笑い芸人のようだ2015年まんが界事件簿――【東村アキコ『ヒモザイル』騒動】が象徴したヒエラルキー東村アキコ『ヒモザイル』が炎上! 主婦&バリキャリ女子を攻撃する“勝者”目線の偏り『地獄のガールフレンド』で“いま”の問題を描く、鳥飼茜の「視点」の強さ女子マンガに登場する「不倫」する女たち——『あなたのことはそれほど』『おんなのいえ』