口臭治療専門医が答える意外な事実「歯磨きよりうがい」「舌クリーナーは逆効果」
――口臭を防ぐためには、どんなことに気をつけたらいいですか?
福田 だ液の量は体内の水分量と関係するので、しっかり水分を補給してください。私が推奨し、ているのは、1日に体重の5%ほどの量を摂ること。ただ、食材に含まれる水分(300mlくらい)と、お味噌汁やお茶など、水以外の水分も摂るので、実際に飲む水の量としてはその半分くらいで大丈夫です。就寝中は乾くので、寝る前、寝起きにそれぞれ200ccくらい水を飲み、残りは日中こまめに摂取します。ただ、カフェインはだ液の分泌を抑えるので、摂り過ぎに注意しましょう。
あとは、よく噛んで食べたり、ガムを噛んだり、しゃべったりして、だ液の分泌を促すこと。パンやクッキーはだ液を吸ってしまうので、口内が乾き気味のときは、ごはんなど水分を吸いにくい食事がおすすめですよ。
――自宅でできるセルフケアなどはありますか?
福田 「うがい」です。のどや舌の表面はヒダ状になっていて、隙間に詰まった汚れが臭いの原因になります。実は、歯の汚れによる口臭は1割ほどで、ほとんどがヒダの奥に詰まった汚れによるものなんです。口に含んだ水やうがいの振動で汚れを浮かせて、しっかり洗い流しましょう。舌と上あごの裏は粘膜同士なので、擦り合わせる方法も汚れが浮きやすいですよ。
なお、歯ブラシや舌クリーナーなどで舌の表面を擦るのは、汚れをヒダの隙間に押し込むことになってしまうので、実はかえって口臭を強くしてしまうんです。
■治療すれば口臭は1カ月で治る
――すでに口臭があると感じている場合、どうすれば改善できるのでしょうか?
福田 深刻に悩むほどの臭いなら、専門医でチェックしてもらうのが一番です。きちんと治療すれば1カ月で治りますよ。ただ、前述の通り「思い込み」の場合もありますから、気にしすぎないことも大切です。「口臭のせいで友達や恋人ができない」と言う人もいますが、口臭があっても人に囲まれている人はたくさんいます。つまり、口臭が全てではないということです。口臭が改善しても気持ちが変わらないと意味がないので、そのような場合は、まず心の問題に向き合うことから始めましょう。
――もし周囲に口臭のキツい人がいた場合は、どうすればいいですか?
福田 口臭は治療で治るものなので、伝えてあげてほしいと思います。臭わなくなれば、本人も周りもハッピーですよね。そのとき、ただ指摘するだけではなく、口臭専門医の存在を一言添えるなど、治せることを提示すれば伝えやすいし、指摘された方も、悩むのではなく、解決に向けて行動できると思います。最近はエチケットで口腔ケアをする人も増えているので、「治療はエチケットの延長」くらいのスタンスなら、足を向けやすくなるのではないでしょうか。
――相手を傷つけてしまいそうで言いづらいとの声をよく耳にします。
福田 口臭の指摘は相手の人格ごと否定するような印象がありますもんね。でも、パーフェクトなケアをしていて、口内に何の問題もなくても口臭がある人だっているし、口臭はライフスタイルや治療ですぐに治せるから、本当はそんな意味合いはこもらないものなんですよ。指摘する側が、肩に着いた糸くずを教えてあげるのと同じような感覚で伝えられるくらい、口臭への世の中の意識が変わっていったらいいなと思います。
(取材・文=千葉こころ)
福田久美子(ふくだ・くみこ)
女性のための口臭治療専門プライベートデンタルサロン「Fukuda MKM」院長。同サロンでは、口臭治療と心理セラピーやコーチングの手法を融合させた独自の「Kメソッド」を提供している。
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