カルチャー
ワコール・村田美紀さんインタビュー

「小さく見せるブラ」「ノンワイヤー」トレンドに見る、オンナの“おっぱい”への意識

2017/10/20 17:00

「グッドアップブラ」1992年

――かつてのブラジャーは、「胸を大きく見せたい」という女性の願望が現れていたように思います。ブラジャーはどのように変遷していったのでしょうか。

村田 戦後、欧米の流行のファッションが日本に取り入れられるとともに、ブラジャーもどんどん変革してきました。67年にツイッギー来日、ミニスカートブーム、70年代にパンタロンとリブニットがはやると、70年代前半、弊社はニットをきれいに着こなせる「シームレスカップブラ」を開発。その後、90年代になるとジュリアナブームが到来。ボディにメリハリのあるスーパーモデルが人気となり、ボディラインを強調するファッションが流行し、92年に「よせてあげる」がキャッチコピーの「グッドアップブラ」を発売しました。90年代は、バストコンシャスの時代でしたね。

――「よせてあげる」背景には、男性に対して“モテたい”という意識があったのでしょうか。

村田 ボディコンファッションそのものに、対男性目線を意識したところはあったと思います。ただ、どちらかというと女性が消費社会の主役になり台頭してきた時代だっただけに、“鎧”のような位置づけで流行したと考えています。バストシルエットも今主流の丸いものではなく、ツンと上向きでした。

――2000年代に入ってからはいかがでしょうか。

村田 99年にバストシルエットにまるみのでる「マシュマロブラ」を発売し、続く2000年代は柔らかい印象の自然なバストシルエットが主流になりました。樹脂ワイヤーを使用しているので、肌あたりはソフト。ファッションも派手なものやブランド志向から、等身大でコンサバティブな傾向に。“癒やし”“ヒーリング”がブームになった時代でもあります。その空気に合わせて、ブラジャーもマシュマロのような触感が受け入れられたのだと思います。

「マシュマロブラ」1999年

――2010年頃から、ブラジャーの多様化が進んだように思います。

村田 はい。2010年に、大きな胸を「小さく見せるブラ」を発売しました。実は、発売当初は「需要はあってもそこまで反響は大きくはないだろう」と予想していたんです。ところが、ウェブ限定販売で計画の1.5倍売れまして、弊社としても驚きました。「シャツを着るときにバストが大きすぎるとボタンが閉めづらい」「無理に盛り上げたくない」という悩みを抱えている方が結構いらっしゃったんですね。トラディショナルなスーツもバストが小さめの方が着こなしやすいというのもあります。

 一方で、エイジングケアも1つのテーマに。同年、40代女性をターゲットにした「胸もと年齢マイナス5歳をめざすブラ」を発表いたしました。個人差はありますが、バストはだんだん上辺がそげて、ハの字に開いて下垂します。靴や服と違ってブラジャーはバストに合っていないことに気づきにくい。加齢に限らず、サイズが合っていないブラジャーを使用していたり、スポーツのときも同じブラジャーで過ごしたりして胸が揺れると、胸を支えているクーパー靭帯がのびて下垂につながります。3カ月に一度は、ビューティアドバイザーによる計測をおすすめしています。

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