豊田真由子議員、謝罪会見で「夫と仲良し」発言の意味――「結婚=人格者の証拠」への違和感
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「仲の良い夫がいるんですけど」豊田真由子
(謝罪会見、9月18日)
人気商売の人が行う謝罪会見とは、「自分の気持ちを話すこと」ではなく、「見ている人の気が済むように謝ること」が目的だと私は思っている。そういう意味でいえば、豊田真由子議員の会見は大失敗だったのではないだろうか。元秘書への暴言や暴行を「週刊新潮」(新潮社)に暴露された豊田議員。世間が期待するのは、元秘書への全面謝罪だろうが、豊田議員の釈明を一言でまとめると、“自分は頑張ってきたアピール”である。
今回のケースは、相手が国会議員という公人であること、元秘書が音声などの証拠をそろえていたことから週刊誌が食いついた。しかし一般社会では、訴えることはしないまでも、“とよまゆ的”なパワハラ被害に遭ったことがある人は多いのではないだろうか。
個人的な話で恐縮だが、会社員時代、私の隣の席の女性(以下、Aさん)が、豊田議員と同じく東大法学部卒だった。彼女はちょっとしたことで激高しやすく、気に入らないことがあると豊田議員の「このハゲーっ!」と同じ調子で怒鳴る性質を持っていた。基本的にAさんはいつも怒鳴っていたものの、誰にでも怒鳴るわけではなく、ちゃんと人を見ていた。対象は、自分より若く、学歴が低く、権力がない人。けれど、自分と同じくらいの年齢の女性社員や、押し出しが強かったり、オラオラ系の男子社員には、たとえ学歴が低くても、敬意を持って接していた。
豊田議員は、後援会の人には非常に評判がいいという記事を目にしたことがあるが、Aさんと同じく、上下関係で完全に態度を変えていたのだろう。それはオトナとして当然の処世術だが、豊田議員が間違ったのは、秘書を怒らせるデメリットを理解していなかったことだ。自分が雇用しているという意味では、秘書は下の存在だが、“自分の秘密を知っていること”、またスマホさえあれば音声の録音や動画を撮れるので、“その秘密をマスコミに持ち込めること”を考えると、秘書は後援者や有権者と同じように、ある程度は敬うメリットのある存在なのだ。
終始、「あの恫喝はたまたまであって、日常的ではない」ことを繰り返した豊田議員だが、会見の最後に、「新潮」の記者から質問を受けると、これまでの殊勝な態度は消え失せた。あごを上げ、敵意を表した薄目で攻撃的に話す様子は、真偽は別として、激高しやすく、パワハラが日常化していた印象を与えて本人に損だろう。しかし、そういう計算ができないくらい、良くも悪くも豊田議員は裏表のない人と見ることもできる。