【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

宗教にハマッたイギリス人の夫が暴行、臨月間際で馬乗りに……【別れた夫にわが子を会わせる?】

2017/09/26 15:00

メンタルの弱い彼が手を上げる

 田中さんは彼と同居を始める。資産家の両親に買ってもらい、彼女が一人住まいをしていたマンション。そこに彼が転がり込んできた。

「同居して思ったのは、彼がとても誠実で真面目な人だということ。家事は積極的にやってくれますし、きちょうめん。それでいてメンタルが弱い一面もありました。イライラしてパニックになったり、物に当たったり。ときには自分の腕をナイフで切ったりするんです」

――彼のメンタルの弱さは、どこからきていたのでしょうか?

「生い立ちに一因があるのかもしれません。彼はイギリスの田舎町出身なんです。住んでいるのは白人ばかり。外部の人が入ってきたら警戒するという、保守的で閉鎖的な土地柄なんです。父親は元軍人。冷戦の時代に、国内外の基地を転々としていたらしいです。一時期、アルコール依存症で、彼は父親からよく暴力を振るわれていたそうです。向こうの両親によると、小さい頃、ちょっと難しい子だったようですし、高校時代はいじめられていたそうです。実際、彼本人から『ずっと自殺願望があった』と聞いています。

 その後、彼は2000年ぐらいに来日します。生きづらさを克服するために、世界中のあらゆる宗教に興味を持つようになったそうで、そのひとつが仏教だったんです。そこから、東洋の文化、そして日本という国へと興味が広がっていったのだとか」


――同棲から結婚に至ったきっかけは何でしたか?

「夜の営みのとき、宗教上の理由なのか、避妊具の装着を毎回拒否されました。そうして回を重ねているうちに、自然と子どもがデキてしまったんです。妊娠がわかったとき、そのまま子どもを産むかどうか、頭を抱えました。仕事でキャリアを積んでいきたいって思っていたからです。それですぐ、妊娠したことを彼に伝えると、彼はたちまち血相を変えて言うんです。『千恵美とおなかの子どもを殺して、俺も死ぬ!』って。私、まだ別に堕ろすとは言っていないのにですよ。

 怖くなったり、嫌いになったりしなかったのかって? それはないです。むしろ、その真剣さに惚れ直しました。生まれてくる子どもに、それだけ愛情を注いでくれているんだって、わかりましたから。それで私、産む決心がついたんです」

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