【インタビュー】藤田紀子さん、若貴兄弟を育てた“母目線”で語る「いい過保護と悪い過保護」
人気ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)が9月13日に最終回を迎える。超過保護環境で育てられ、21歳にもかかわらず、全て親まかせの主人公・カホコ(高畑充希)の成長と、その母・泉(黒木瞳)の関係を描くホームドラマ。娘離れできない泉は、しばしば「毒母」と批判されるが、果たして「過保護な母」=「毒母」なのだろうか。兄弟横綱・若乃花(花田虎上)と、貴乃花親方を育て上げた藤田紀子さんが、過保護と子育てについて語った。
――母親の「過保護」についてどう思われますか?
藤田紀子さん(以下、藤田) 度が過ぎた過保護は子どもの成長妨げると思います。でも、ある程度は過保護な面もないと厳しさを出すことができない。うちは、いまだに息子に「鬼だった」と言われるくらい激しく育てましたけれども(笑)、ある面、他人から見たら「過保護だ」と思われるような甘い面もありました。それも大切だと思っています。
相撲部屋の女将として各地から入門した10代半ばのお子さんを何十人と見てきましたが、親の愛情を受けてきていない子の中には、いじめなどの問題を起こす子も少なくありません。「過保護」というと「親のいいかげんな愛情」と取られがちですが、そればかりじゃないんです。愛情があるかないか、一番感じているのは、親よりも当事者の子ども。親がものすごく厳しくても、「自分は親に愛されている」と感じている子はちゃんと成長すると思う。
――厳しさと愛情のバランスが難しいですね。
藤田 難しいですね。うちは、守らなければいけないことが何カ条かありました。ご挨拶、門限……守らなかったときは、体罰。今だと「逮捕される」と言われちゃうんですけど(笑)。例えば、来客中に「静かにしなさい」といっても、1歳半しか違わない男の子2人って、すぐ騒ぐんですね。何度注意しても聞かなければ、ビンタしたりおしりを叩いたりしていました。
そういえば、初めて建てた一軒家では、1年に1回壁紙を替えていました。親方(故二子山親方)は投げつけて怒るものですから、大ケガはしませんけど鼻血が飛んじゃうんです。だから替えざるをえない。もちろん、親方が巡業で留守にすることが多いので、部屋の雰囲気を変えて新鮮な気持ちになってほしいという思いもあったんですが。
――一方で、「過保護だった」と思うエピソードはありますか?
藤田 光司(貴乃花光司親方)が中学、虎上が高校のとき、明大中野の相撲部に在籍していて、平日授業の後はもちろん日曜・祭日も稽古。くたびれたんでしょうね、ほかの子は電車に乗って帰るんですが、光司が電話して来るんです。「まあちゃん(虎上)が、足が痛くて歩けないから、ママ迎えに来て」って。私はどんなに忙しくても「今すぐ行くから」と車で迎えに行っていました。あとから考えて私、大甘だなと思いましたよ(笑)。
そういう甘いところはいろいろありましたけど、子どもが自立しなかったかというと違うじゃないですか。15歳と17歳で相撲部屋に入門して、父親は親方、母親は女将、親子であって親子でない関係になりました。それから私は一切小遣いを渡していません。その前は、同級生と同じようにあげてましたが、入門したら自分たちで強くなって稼ぎなさいという方針でした。親元を離れて暮らすほかの弟子は、親御さんからの手紙の中にお金が入っているのが透けて見えるんです。親方に知られたらものすごく怒られるんですが、私は1人くらい味方がいた方がいいだろうと思って、見て見ぬふりしていました。けれど、結局そういう子たちは成長しなかった。ほしいもの、食べたいものがあれば仕送りしてもらえるのだから、伸びません。