認知した「隠し子」発覚……夫は15年間、2つの家庭を行き来していた【別れた夫にわが子を会わせる?】
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第6回 根本みゆきさん(仮名・61歳)後編
30年前、地方転勤が多い1歳下のゼネコン社員と結婚した根本みゆきさんは、長年、不妊治療をしていたが、子どもが授からず、41歳のとき、生まれたばかりの男の子を引き取った。夫は最初、子育てに協力的だったが、1時間半ほど離れた町へ単身赴任になると、徐々に帰ってくる頻度が減っていき、1カ月に一度になった頃、浮気が発覚。それは息子にも知られるところとなり、夫婦の距離は開いていった。夫には、認知もしていた「隠し子」がいたのだった。
■戸籍謄本を取り寄せ、夫に離婚を突きつける
3年前に離婚に至ったときの経緯は、どうだったのだろうか?
「(相手の女からだと思われる)いたずら電話が続いていました。うんざりして、警察に相談に乗ってもらったんです。すると『くれぐれも関わってはいけませんよ。あなたには何の落ち度もないんですから』って助言されただけ。かといって、おとなしく何もしないのでは、不安や不満が抑えられない。そこで私、いよいよ確かめることにしたんです」
根本さんが夫の戸籍謄本を取り寄せると、知らない女の子の名前の下に“認知”と記されていた。生年月日も記してあり、計算すると、女の子は11歳。認知した年月日と照らし合わせると、3歳のときに認知したことになる。
「すぐに離婚することを決めました。それが3年前の春です。たまたま、数日後には、夫が1カ月ぶりに転勤先から帰ってくる予定でした。というのも、その日が私の誕生日だったからです。その日なら、面と向かって離婚を伝えられます」
数日後、根本さんの誕生日に、夫が予定通りに帰ってくる。
「謄本を突きつけて、『一体どうなってるの?』って強い調子で迫りました。『この女の子誰よ? 母親は、あんたが一緒に住んでる女でしょ』と問い詰めたんです。すると『誰だよ、それ。知らねえよ。いい加減なことを言って、ふざけるんじゃねえよ』って逆ギレされました」
根本さんはひるまなかった。
「『明日専門家を呼んで、あなたとは終わりにしますから。そのつもりでいてください』って、たんかを切ったんです」
夫は1日中、家にいたが、2人にもはや話すことはなかった。その口論が、夫婦で直接交わした最後のやりとりとなった。