【連載】別れた夫にわが子を会わせる?

認知した「隠し子」発覚……夫は15年間、2つの家庭を行き来していた【別れた夫にわが子を会わせる?】

2017/08/16 15:00

息子と2人で、門出のバースデー

 夫婦の最後の話し合いのとき、当時高校生だった息子さんはどうしていたのか?

「『ママはパパと大事な話があるから、近所の人の家に行って待ってて。後で迎えに行くから』と言って、息子には家を離れてもらってました」

 その後、息子さんを迎えに行き、2人で自宅に戻ると、そのまま根本さんの部屋に入って、2人きりの誕生会を開いた。根本さんのために、息子さんはバースデーケーキを買ってきていた。

「ケーキを箱から出して、ロウソクを立てて火をつけます。“ハッピーバースデー・トゥ・ユー〜”って歌ってくれてね。私がロウソクを吹き消しました。ナイフで切り分けて、それぞれの皿の上に置きました。

 ここまで終えてから、息子に大事な話を切り出しました。『ありがとうね。ママうれしいよ。それでね今日、なんでパパと3人で祝わないかわかる?』って聞いたらね。息子はじっと真剣な表情で、私の顔を見ました。


『実はね、ママはパパとお別れするのよ。結婚をやめるの』
『うん……』
『パパとママ、どっちについて行きたいか、自分で選んでいいんだよ』

 息子は一切動揺したりすることもなく、間髪入れずに答えました。『そんなの、決まってるよ。ママと一緒にいるよ』って。

『ああそう? でも、今までみたいに贅沢はできないよ。大丈夫?』
『うん、わかる』

 ほんと、この子いい子だなと思った。確かに、血のつながった子どもではないですよ。でもね、本当にこの子ってステキに育ってくれたと思ってありがたかったし、うれしかった。これまで息子を大事に育ててきたかいがありました」

 根本さんが58歳になったタイミングで行われた、彼女と息子さんだけのささやかな誕生日パーティーは、2人にとって人生の新たな出発を記念してもいたのだ。


「やっと離れられるという解放感と息子に祝ってもらった喜び、今後の生活への不安と期待と、ケーキを口にしながら、いろんな感情が頭の中に渦巻いていました。一抹の寂しさもあったのかもしれません。だって、夫とは愛し合って結婚したんですよ。『幸せにするよ。落ち着いた生活をしよう』って言ってくれたのに、こんな結末なのですから」

わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち