コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」<番外編>

東村アキコ、「結婚したい30代への助言」に見る矛盾――『東京タラレバ娘』に欠けていたモノ

2017/08/10 21:00
『東京タラレバ娘9』(講談社)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「(結婚したければ)ツッコミ気質をやめること」東村アキコ
「CLASSY.」2017年9月号(光文社)

 AVと少女漫画は似ていると思うことがある。

 前者は青年向け、後者は少女向けだが、自分からアクションを起こさなくても、自分に都合のいいことばかりが起きるという意味でよく似ている。男を萎えさせるようなムダ毛が1本もない女優たちが、男優の技に歓喜し、必ずオーガズムに達するAVに嘘くささを感じる女性がいるように、“学園のスターが、平凡な私に恋をして両想い”という少女漫画の王道は、男性にとってはちゃんちゃらおかしいことだろう。AVや少女漫画はファンタジーの一種といえるが、婚活においては、ファンタジーに足を引っ張られることになる。なぜなら、婚活とは一種の条件闘争で超現実だからである。

 水と油と同じくらい交わることのない、少女漫画と婚活。そこに切り込んだのが、人気漫画家・東村アキコの『東京タラレバ娘』(講談社)である。少女漫画と婚活といえば、『きょうは会社休みます。』(集英社)のように、ファンタジック路線を追求する(平凡な33歳OLが、酔っ払って12歳年下のイケメン高学歴大学生相手に処女喪失し、交際することになる。一方で「若い子に飽きた」年上のイケメン起業家にもアプローチされる)ものもあるが、『東京タラレバ娘』は、「夢を追いかけているうちに30歳を過ぎた」女子3人が、「結婚したいけれど、適当な相手がいない」という超現実的なテーマを掲げていただけに、個人的に期待していた。

 婚姻率は、年齢が上がると下がる。国勢調査から計算すると、30歳の女性が35歳までに結婚する確率は30%程度、35歳をすぎると2%程度まで落ち込む(もっとも、結婚願望がない女性もいるので、この数字が正確とは言いきれない部分もあるが)。

 『東京タラレバ娘』の33歳の主人公たちも、相席居酒屋で外見がタイプでない男性に「(年齢が)結構イッてるなと思って」と、「自分たちは、自分たちが思っているより若くない」ことを思い知らされる。このほかにも、本作には少女漫画とは思えないほど「もう若くない」ことを繰り返すエピソードはいくつかあり、不快に思う人もいたと思うが、私は逆に「若くなければどうしたらいいのか」を提示する伏線だと思っていた。

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