『ハロー張りネズミ』、熱くなりすぎずオシャレになりすぎない“程よい熱”の俳優・瑛太
TBS系の金曜ドラマ(午後10時)で放送されている『ハロー張りネズミ』が面白い。原作は『島耕作』シリーズで知られる弘兼憲史が、80年代に「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載していた人気漫画。あかつか探偵事務所で働く七瀬五郎(瑛太)たち探偵が毎回、不思議な事件を解決するドラマだ。
物語は人情モノから企業犯罪、そしてオカルトモノまでと幅広く、いい意味で何でもありの遊び心あふれる作品となっている。全話の脚本・演出を手がけるのは大根仁。ドラマ『モテキ』を筆頭とするテレビ東京系の深夜ドラマを主戦場とし、“深夜ドラマ番長”といわれてきた大根だが、劇場版『モテキ』以来、最近は『バクマン。』や『SCOOP!』などといった映画制作に活動の拠点を移していた。テレビドラマは実に久しぶりだが、そこに選んだのが深夜ドラマではなく金曜ドラマという、民放地上波のプライムタイムだったことは衝撃だった。元々、金曜ドラマは大根の師匠にあたる演出家・堤幸彦が『ケイゾク』等の作品で主戦場としてきたドラマ枠だということもあって感慨深いものがある。
サブカルチャーネタで物語を引っ張る『モテキ』をヒットさせて以降、大根は『まほろ駅前番外地』(テレビ東京系)や『リバースエッジ大川端探偵社』(同)といった、ノスタルジックな街で便利屋や探偵が活躍する事件モノによって、より万人受けするようなエンターテイメントを志向してきた。それは本作でも健在である。
もちろん、俳優陣も魅力的である。何を考えているかわからない探偵・木暮久作を演じる森田剛(V6)、いまだにバブルの匂いを漂わせる痛い酔っ払い女と見せかけて、実は五郎たちを見守る探偵事務所所長を演じる山口智子。魔性の女が板についている深田恭子に、うさんくさい霊能者を演じる蒼井優。そしてリリーフランキーが演じる軽薄な情報屋など、個性的なキャラクターが勢ぞろいしている。
彼らがいかに魅力的でカッコいいかは、いくらでも掘り下げることができるが、今回はあえて主役・七瀬五郎を演じる瑛太について注目してみたい。
ファッションモデルとして活躍していた瑛太は、2001年に『さよなら、小津先生』(フジテレビ系)で俳優デビュー。『WATER BOYS』(同)や『のだめカンタービレ』(同)に出演し、三番手、四番手の役で良い芝居をする俳優として注目されていたが、キャリアを重ねるにつれて、いつしか主演の演技ができる俳優へと成長していった。