「ナイトプールで泳がない人」への誹謗中傷、慰謝料100万円請求される可能性も!
「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。
<今回の番組>
『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系/7月19日午後4時50分~)
<今回の疑問>
ニュース番組でインタビューを受けていた人に対して、ネットで誹謗中傷の書き込みをしたら罪になる?
ナイトプールを特集したニュース番組で、インタビューに「化粧が落ちるから泳がない」と答えた女性が、ネットで批判を受けていた。一部の書き込みは削除されているが、「なら来るな」「ナンパ目的」「泳ぐ人に迷惑」「ブス」「死ね」「男漁り」といったコメントがされていたという。ニュースで取り上げられた一般人に対する、こうした誹謗中傷ともいえるコメントは、名誉棄損罪や侮辱罪にならないのだろうか? アディーレ法律事務所の時光祥大弁護士に聞いた。
時光弁護士によると、名誉棄損罪も侮辱罪も、「公然と」行われる必要があるという。公然とは、不特定または多数の人に対して行うことなので、ツイッターやネットの掲示板などの誰でも見ることができるところへのコメントは、「公然と行われた」といえる。
「名誉棄損罪は『事実(嘘も真実も含む)』を告げる必要があり、事実を告げない場合は侮辱罪にとどまります。たとえば、単に『バーカ』と言うだけなら侮辱罪ですが、『あなたは大学を3度も留年するくらいバカなんでしょう』と事実付きで行うと、名誉棄損罪になります。この線引きはとても微妙なところですが、『なら来るな』『ナンパ目的』『泳ぐ人に迷惑』『ブス』『死ね』『男漁り』と言った言葉は、事実付きとまではいえないでしょう。
もちろん、その言葉が相手を侮辱するものであることも要件です。『なら来るな』『泳ぐ人に迷惑』は、単に意見を述べるもので、侮辱とまではいえないのではないでしょうか。これに対して、『ブス』『死ね』は明らかに侮辱に当たるでしょうから、侮辱罪になります。『ナンパ目的』『男漁り』も、一般的に相手を侮辱するものと考えられるのではないでしょうか」
ただし、侮辱罪になるには、個人を特定して行う必要があるそうだ。例えば「〇〇県民はバカ」とコメントしても、侮辱罪にはならない。インタビューに答えた人が、どこの誰かわからない場合、例えば顔を映さず匿名だった場合、その人に対するコメントというよりも、一般的にナイトプールに来る女性へのコメントと考えられる。また、顔を映していたとしても、名前などほかの情報がなければ、どこの誰かわからず、その人を特定してコメントしたといえるか、難しいところがあるという。
「なお、名誉棄損罪と侮辱罪は、親告罪といって、被害者の方が警察等に告訴しなければ起訴できず、捜査されることも、ほぼありません。また、侮辱罪は刑法犯罪で最も軽い罪で、罰則は拘留(30日未満の拘束)または科料(1万円未満の罰金のようなもの)のみです。もちろん、民事の損害賠償請求ができることはありますが、匿名でのコメントだった場合、まずは掲示板の管理者などに情報開示を求め、犯人を特定する必要があります」
今回は一般人に対する誹謗中傷のケースだが、有名人の場合と、罪になるならないの境界線に違いはあるのだろうか?
「基本的に、一般の人と芸能人などの有名人とで境界線にあまり違いはないと思います。ただ個人が特定しやすい分、有名人に対する方が罪になりやすいと言えるかもしれません」
過去には、一般人に対するネットの書き込みが侮辱に当たると裁判所が認めた事例もあるそうだ。
「刑事事件ではなく、民事の損害賠償請求(慰謝料請求)ですが、銀座のクラブホステスに対して、客がインターネットの書き込みで『死ね』などと侮辱したもので、裁判所が侮辱に当たると認めました。侮辱罪の要件も満たしていたものと考えられます。書き込んだ客は判決で100万円の慰謝料支払いを命じられました」
たとえ相手が一般人であっても、他人を侮辱するような書き込みをすることは避けるのが無難だろう。
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