サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー「婦人公論」老後問題とセックスの共通点 カルチャー [女性誌速攻レビュー]婦人公論7/11号 老後問題とセックスが絶妙に絡み合う「婦人公論」は中高年の“パンドラの箱” 2017/07/07 19:00 女性誌レビュー婦人公論 「婦人公論」7月11日号(中央公論新社) 今号の「婦人公論」(中央公論新社)は、「老後の安心を手に入れる」です。リードには「『人生100年』などと言われるようになり、不安がふくらんでしまう現代。年金や介護など本当に必要なものを知れば、心細さは薄れていくはずです。女性たちの体験談や新情報にふれて、未来の自分をイメージしはじめてみませんか」とあります。読者の声として紹介されていた「私の将来、ココが不安です」には「生活費」「認知症」「定年夫」「親の介護」など「婦人公論」定番ネタがズラリ。でもちょっと待って……。これらのトピックスに関して「婦人公論」が読者の不安解消に作用したことあったかな……どちらかといえば不安倍増の方向に盛り上がる気がするんですが。 <トピックス> ◎特集 老後の安心を手に入れる ◎人生に必要な性と愛 ◎「被害者らしく」していては何も変わらないと思ったから ■知性もカネも図々しさもある女たち とはいえ、「老後不安」は、「婦人公論」では何度もこすられてきた特集です。「あなたの年金生活をシミュレーション」「認知症やがんを予防して『健康で長生き』を目指すには」のような実生活向け企画もあれば、北斗晶×佐々木健介の“夫婦仲良ければだいたい大丈夫”的対談があったり、「最期まで自分の意志で。『尊厳死』という選択」のような真面目なルポも。その中で今回拝見しますのは「親ですもの、子どもに迷惑かけたっていいじゃない?」。こちら、エッセイストの桐島洋子と社会学者・上野千鶴子の対談ですが、名前だけで圧がすごい。 以前から、ちょいちょい「婦人公論」で「私は子どもに面倒みてもらいます」宣言をしていた桐島。「なるべく子どもの世話にはなりたくない」という高齢者が増える中、この桐島の発言はショッキングに取り上げられていました。対談は、この桐島の老後論をフェミニズムの親玉である上野がアカデミズムに補完するというスタイルで進んでいきます。 桐島のこの持論を、上野は「私はとても腑に落ちて、納得したんです。子どもを産み育てるために、女性はものすごいエネルギーと時間を投資しているわけでしょう。老後にちょっとくらいお世話になってもいいじゃないか、と」と賛同。 桐島「他人様に迷惑をかけたり、お国の世話になったりするよりは、身内とりわけ子どもがまず責任を受容してほしいですね」 上野「ところが最近の高齢者は、『子どもの世話にはなりたくない』『迷惑をかけたくない』とおっしゃる」 桐島「どんな親であり子であったにしろ、親子の縁をいやおうなしに結んでしまったのだから。老後、子どもにほどほどの迷惑をかけてもいいと思います」 と、まぁおっしゃることはわかりますけど、そうやって女性が子育て・家事・介護の役割に追い詰められていくのに対するアンチテーゼが「フェミニズム」ではなかったのか……。しかしよくよく読むと上野先生、介護の核心部分では、自分の意見は述べずに華麗にインタビュアーに擬態するんですよね。その辺りの巧さはさすがといえます。 今の「婦人公論」読者層は、「子どもは年老いた親の面倒をみるのは当たり前」という前世代と「親の介護で人生狂わされるなんてまっぴら」という後世代のちょうど谷間にいて、多くの人が「自分は親の介護をするけど自分が子どもに要求できない」というジレンマの中で生きているのではないでしょうか。「子どもに迷惑かけたっていいじゃない」は、そんな悶々とした中高年たちの“開き直りの呪文”なのかもしれません。 次のページ 抑圧された性がもたらすもの 12次のページ Amazon 婦人公論 2017年 7/11 号 [雑誌] 関連記事 「婦人公論」読者の不倫への言い訳にも防止策にもなる、「女がセックスしがたるなんて」という自縛セックスレスが免罪符に? 「婦人公論」から見えてきた性への渇望「婦人公論」セックス特集の陰で、青木さやかが実母への複雑な感情を吐露自慰とセックスの快感は別物? 「婦人公論」の真面目で明るいセックス対談「夫にはセックスもさせません」、中年婚活の現実を「婦人公論」が特集