便器に歯ブラシ浸けたり、化粧水ボトルにオシッコ入れたり……ムショのコワ~い「イジメ」の話
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■誰でもイジメのターゲットにされる
なんで世の中に「イジメ」ってあるんでしょうね。毎日のようにニュースで問題になってますし、イジメが原因で自殺しはる人もいてるのに。特に塀の中のイジメは、本当に厳しかったです。あのイジメに耐えられれば、多少のことではへこたれません。ホンマ心の底からそう思います。
今思い出しても、ムショのイジメはごつかったですねー。シャバでも同じですが、塀の中でイジメを受ける理由も、それぞれです。告げ口や自慢話をするコはまず狙われますし、ちょっとしたことでもイジメのターゲットにされてしまいます。「いじめっこ」がどの房にも何人かいて、そのコたちに目をつけられたらアウトって感じです。
ちょっとかわいいとか、先輩に生意気な口を利いたとか、面会にいつもダーリンが来てるとか、手紙や差し入れが多いとか、だいたいは嫉妬からですが、どれもがホンマにちょっとしたことで、面倒くさい話なんです。「ガテ」(「手紙」のもじり)といって、小さい紙に「○房の○ちゃんがこんなひどいことをした」などと告げ口を書かれ、あちこちに回されてしまうこともあります。たいていはデッチアゲですけど、読んだコたちは真に受けてイジワルをしてくるわけです。
また、「運動時間」のような限られた自由な時間にアチコチで「シャー」(舎、仲よしグループ)を組んでいろんな話をしてるコたちもいて、これらもホンマにタチ悪いです。ケンカの時など「シャー組んでモノ言っとったらあかんどワレっ」などと言います。「一人じゃ何もできないくせに、つるんでグズグズ言ってるんじゃねえ!」ということです。まあ「おヤンチャ」な隠語ですね。もし誰かがいじめられていても、助けることはできません。そしたら次は自分がターゲットにされるから。これもシャバと同じですね。ムショはシャバの縮図なんやなーとあらためて思います。
■イジメから大ゲンカに発展したことも
イジメの方法もいろいろで、本人の目の前でやる場合と、いない時にやる場合に大きく分かれます。
目の前でやるのは、まずはシカトですね。とにかく無視します。あとは面と向かって「ヨゴレ!」とか「糞メンタ(女)!」とか悪口を言うのもしょっちゅうです。口だけならまだしも、すれ違った時に舌打ちされたり、自分からぶつかってきて、「当たってきた!」と言いがかりをつけたりを、いいトシしてやってくるんです。
たまーにですが、そんなことがきっかけになって、みんなで取っ組み合いになることもあります。そんな時はもちろん私も腹くくって大暴れですよ(笑)。どっちみち懲罰なんで、「やるだけのことはやらなきゃ損」ですからね。
いつだったかは暴れてミシンを倒し、刑務官に取り押さえられて「黙っとけオバハン」と絶対に言っちゃダメな“本当のこと”を口に出して大暴れしたあげく、「担当抗弁」という刑務官にタテつく罪もプラスされて懲罰を受けたこともあります。