カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「GINGER」6月号

ZARAに心も体も売った!? “その他大勢とは違う私”というプライドを捨てた「GINGER」

2017/05/23 17:40

 以前から筆者は、「GINGER」は現実主義な雑誌だと言ってきました。それは恋愛企画が皆無で、ファッションについては、個性的だったりハイブランドだったりするわけではなく、実現可能なオシャレを提唱していたからです。しかもそのコーディネートには計算し尽くされた細かいルールが無数に存在しており、読んでいてもまったく気分が上がらない。それは「愛されたいから」「オシャレが好きだから」といった素直な気持ちではなく、「他人に舐められない」ためにするオシャレだから……と感じていました。

 「GINGER」の読者層は都会で働く自立したアラサー女性で、おそらく学生時代には平均以上に勉強ができたでしょうし、仕事も平均以上にできるのでしょう。だからオシャレも、まるで教科書のように文字情報の多い「GINGER」片手に、平均点以上の点数を取るため頑張ってしまう。「GINGER」に“一人旅”や“スピリチュアル”企画がたびたび投入されているのは、そんな真面目で努力家な彼女たちの多くが疲弊しているからと受け取れますし、先月号で唐突に“モテ”や“男”が登場したのも、彼女たちに新たな価値観を与えようとしたからなのではと感じられるのです。しかし、どれもいまいちヒットせず、特に“モテ”特集は、彼女たちを救うどころか、さらに苦しめる結果に終わったように思えます。

 だから、今月号は思い切って、その真面目で努力家が故の面倒くさいプライドを捨ててみた=「誰もが知っているZARAをごり押し」したではないでしょうか。「そんなに頑張らなくていいよ」と、どんな場面でも手を差し伸べてくれるZARAは、まさに「GINGER」女子の救世主だったのかもしれません。

 しかし一方で、何も考えずにZARAを着ていればOKと決めてしまうのは、思考停止状態とも言えます。例えば、「旅行に行くのが趣味だからお金を貯めたい→服の優先順位は自分にとって低いからZARAでOK」といった考え方ならば納得できるものの、そういった“ZARAを着る意味”が誌面から見えて来ないのが気になるのです。「GINGER」の誌面から浮かび上がる女性像は、ある程度のキャリアを持っているものの、自分の言動の根拠に乏しいという一面も垣間見え、それは、将来に対する具体的なイメージがぼんやりしていることにも通じます。「GINGER」を愛読している女子は、バリキャリを目指しているわけでもなさそうだし、かといって恋愛や結婚を志向しているわけでもなく、趣味人というわけでもなさそう。「他人よりも少しばかり抜きん出たい」という唯一のプライドを捨ててしまった今、「GINGER」女子たちは一体何を目指すのか……その自意識の行方が気になるところです。

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