酒鬼薔薇・宮崎勤事件の犯行声明文の“字”はなぜゾワゾワする? 驚愕の筆跡鑑定の世界
――宮崎勤の事件や酒鬼薔薇事件など、猟奇殺人犯の犯行声明文はその内容だけでなく、書体も見ていて非常にゾワゾワした記憶がありますが、書体の「何」がそう思わせたのでしょうか?
牧野 宮崎事件、酒鬼薔薇事件ともに、筆跡を隠すための直線的な文字で紙一面埋めつくされています。これらの筆跡を見た瞬間、通常の人であれば無意識が危険信号を出します。ゾワゾワする、つまり落ち着かなさや違和感を持たせ「この文字は危険だ、近寄るな」と知らせているのです。
筆跡心理学では丸みのない直線的な文字は感情の起伏や情緒性の乏しい気質を表します。通常の神経の持ち主であればこのような文字は書こうとしても書けません。しかし、この2人の犯行文は、明らかに定規を使用、あるいは使用したかのように不自然な筆跡であって、どう見ても自然筆跡の「ひどいクセ字」のレベルではありません。
このような書体を維持しながら1頁書くことは、「異常とも言える集中力」がなければ無理です。その結果、これらの犯行文からは、そのぎらぎらとした異常な感じの集中力に溢れています。普通の人はそのような異常な集中力から薄気味悪さを感じるものです。
――異常な書体だけでなく、異常な書体で書き続けられる心の在りようが、不気味だと一見して伝わってしまうんですね。
牧野 また、筆跡心理学には「運命を悪化させる書いてはいけない文字の形」というのがあります。文字が右に傾いている右傾文字、下が狭くなっている下狭文字、線と線が衝突している異常接筆や線衝突と呼ばれる文字です。
――異常接筆の人はたまに見かけますが、確かに何か危険なものを感じます。右傾、下狭は、ぱっと見普通っぽいものの、やはり何か座りが悪いです。
牧野 これらの文字は普通の人が書こうとしてもなかなか書けません。また、むりやり書いたとしても書いた本人が落ち着きません。これらの文字を書き続けることで運命が悪化してしまうのは「不安定な文字を好んで書き続けるのは、心のどこかにそのような不安定さや異常さを望んでいる部分がある」からだと考えられます。
人は皆、無意識に自分の性格や気質に応じた形の文字を書いています。ですから文字の書き癖には自分の性格や気質が表れています。文字と心はリンクしていますので文字を変えれば心は変わります。性格を変えることは難しいことですが、文字のちょっとした一部分を変えることはできそうな気がしませんか?