酒鬼薔薇・宮崎勤事件の犯行声明文の“字”はなぜゾワゾワする? 驚愕の筆跡鑑定の世界
「筆跡鑑定」について前編より、筆跡鑑定人で『自分のイヤなところは直る!』(東邦出版)著者の牧野秀美氏に伺っている。今回の後編では「字も年を取るのか?」「酒鬼薔薇事件など、猟奇殺人犯の犯行声明文はなぜ筆跡がゾワゾワするのか?」についてや、今すぐできる「金のたまる自分の名前の書き方」についてもレクチャーしてもらった。
字が年を取るのは「省エネ」で書こうとするから
――字も年を取りますよね。自分が学生の頃に書いた字を見ると若いなあ、と思います。
牧野秀美氏(以下、牧野) 一般的に人が年齢を重ねていくように文字も年を取ります。若いうちは肌に張りや艶があるけれど、年を取るに従って乾燥してしわが増える、文字もそんなイメージです。
小学生男子の文字と高齢者女性の文字を見比べてみましょう。小学生男子の字は枠いっぱいに力強く書かれ、手の動きもスムーズです。一方、高齢者女性の文字からは思うように手が動かない様子がみてとれます。体力、筋力の衰えに従って文字も、筆圧が弱くなり手を大きく動かさなくても済む書き方になっていきます。
文字も体と同じように老齢化する、枯れていくのが一般的ですが、小学生男子であっても小さな文字を書いたり、80歳を過ぎた高齢女性でも枠いっぱいの力強い文字を書く人も存在します。これはその人の持つ内面のエネルギー量の違い、体力の違いです。若くても落ち着いて老成している気質の持ち主であったり、高齢であっても心身共に健康で気力に溢れている、若くありたいという気質であったりすることに関係があるとされています。
――男性と女性の書き文字にも違いがありますよね。ただ、男性なのに女性のような字を書く人などもいますが。
牧野 ステレオタイプな解釈ですが「A.筆圧が高い、太い、大きい、角ばっている、一筆書きのような続け字」と「B.筆圧が弱い、線が細い、丸みを帯びている、繊細な続け字」ならAが男性でBが女性、このようなイメージを誰もが思い浮かべると思います。
ただ、必ずしも文字が男らしいから書き手も男性、女性っぽいから書き手も女性ということにはならず、例外も多いですね。私もかなりの人数の文字を見てきましたが、文字の感じからAが男性、Bが女性というのは思い込みレベルのような気がします。
――あまり男性だからこう、女性だからこうというのはないんですね。
牧野 「豪快(男性的)な気質を持つ人は男女にかかわらずAのような文字を書き、繊細(女性的)な気質を持つ人は男女にかかわらずBのような文字を書く」の方がしっくりきますね。子どもと高齢者の文字でも触れましたが、年齢や男女差でパターン分けされるのではなく、その人の持つ「気質」によってパターン分けされるといった方がピッタリきます。