カルチャー
佐々木俊尚氏×白河桃子氏対談(前編)

アイドルや宗教は家族の代わりになるか? 無縁の共同体の可能性――佐々木俊尚×白河桃子対談

2017/03/31 15:30

――あと、結婚後に問題になりがちなのが、相手の家族との関係がこじれてしまうケースですよね。

佐々木 男女間の恋愛で結婚して、親は関係ないと言いながらも、結局は相手の親に引きずられるんです。結婚した瞬間に“家問題”が生じてしまう。そこのジレンマは結構あるんじゃないですかね。同時に夫婦って一対一の狭い関係ですから、あまりに夫婦の関係が強すぎると息苦しい。そうじゃない、もう少し自由な選択ができるような関係性を求める人もいると思います。「出入り自由な共同体」「束縛されないけど安心感がある共同体」、二律背反したものを求める人が実際増えてきている。“無縁の共同体”が、いい関係性を作れるんじゃないかと期待しています。

白河 ただ、いまの社会では、多くの女性は、まだそこまでの新しい生き方を求められないんじゃないかと思います。結婚しないままの関係でいいかというと、女性の方がそんな保障のない関係にメリットを見いだせていない。そこは、やっぱり子どもを持っても女性の経済力が失われないという安心がないと、なかなか無縁の共同体を選ぶまでには、至らないんじゃないでしょうか。

佐々木 確かに結婚を「保障」とする考えは根強いです。とはいえ、いまや結婚適齢期世代でも非正規雇用が増えていて、安定と結婚がイコールにならないという残念な状況。もはや経済的なセーフティネットとして結婚を捉えきれないんですよ。でも、たった1人で社会に立ち向かうってのは大変じゃないですか。というか、そんなの不可能です。それができる人って、10人に1人くらいじゃないかな。だからこそ、僕はやっぱり結婚よりも仲間が重要だと思うんです。

 僕の新聞記者時代を振り返ってみても、よく手柄を横取りされるとか、ひどい目に遭ったんですよ。でも、そのときに必ず親しい先輩がすっとそばに来て、「佐々木、見ている人は見ているからな」って声を掛けてくれる。こういう感じの共同体って、大事だと思うんですよね。よく仲間っていうとコミュニケーション能力が必要といわれますが、コミュ力がなくても、目立っていなくても、それをちゃんとカバーしてくれて、かつ居心地がいい仲間って、どこかにいると思うんです。
(末吉陽子)

(後編へつづく)

最終更新:2017/04/03 13:45
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