サイゾーウーマンカルチャーインタビュー性被害は被災と同じくらい大変なこと カルチャー 『13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』著者・山本潤さんインタビュー 「性被害は被災と同じくらい大変なこと」被害者支援の立場から見た、性暴力を取り巻く社会の現状 2017/03/21 15:00 インタビュー性犯罪性暴力 ■“良い性的な関係”を築くためにはどうすればいいのか、わかっていない 『13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル』(朝日新聞出版) ――性被害を受けた人に言ってはいけない言葉はありますか? 山本 「そんな大変なことは忘れて、前を見ようよ!」と、被害者は言われがちなんですが、人は大きな被害を受けたとき、忘れることはできません。それは震災の被害に遭った方も同じですし、大切な人を殺されたり、大きな事故に遭ったりしたときも同じだと思います。同じくらい大変なんだよ、ということを想像しながら関わっていけばいいのではないかと思います。 ――「忘れて前を見ようよ!」なんて、つい言ってしまいそうです。性被害者の心理に関する知識が広まるためには、どうしたらいいと思いますか? 山本 支援機関に携わっている人ならマストで知っていることなのですが、一般の人には広まっていないのが現状です。やはり、こうやって報道されることや、あとは教育をしていくことですね。 ――教育は大事ですよね。キャンパスレイプも起こっていますし、特に若い世代は性暴力に関する知識があまりにもないのではと感じてしまいます。お酒で酔いつぶれた女性はOKサインだと思って性的暴行をした、という話も聞いたことがあります。 山本 そのあたりのことを学校はきちんと教えていません。アメリカだと、新入生に「性暴力対応トレーニング」を先輩が後輩に行うんです。何が同意で何が同意でないか、ということもそうだし、女性を酔いつぶしてレイプをしたら、それはもう犯罪なのだということ、そのような状況を見たらどう助けるのか、ということまで学びます。また、飲み物にクスリを入れられるケースもあるので、そういう具体的な手口も教えつつ、どうやって止めるのかもトレーニングで学ぶということをしています。 ――日本にはそういった教育がありません。やはり、性暴力に関する法律が遅れていることも要因にあるのでしょうか? 山本 教育委員会や政治家の人たちの価値観によるものでしょう。市民が性暴力に関する現在の法律について、おかしいとわかってくれることが大事だと思います。そうすると、それが政治家を動かす力になるはずです。裁判員裁判だって、以前は司法の世界の昔ながらのやり方で、「強姦罪だったらこのくらいの刑」と下されていたものが、市民が入ることで、「こんなひどいことをされているんだから、その判決はおかしい!」というふうに、量刑が重くなったケースもあるので、市民感覚が反映されるのは重要だと思います。 また、日本では性に関することはタブーになっていますが、その中でも性行動自体の内容は多岐にわたっています。セックスは本当に同意のある良い関係の人と行うと、健康寿命が伸びるというデータもありますし、悪いものではありません。そういう“良い性的な関係”を築くためにはどうすればいいのか、わかっていないから、ドラマやアダルトビデオ、漫画などから学んでDVが起こったりするのではないかと思います。 次のページ “私たちの同意ガイドライン”を作っていきたい 前のページ123次のページ Amazon 13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル 関連記事 「性被害がまるでポルノ作品のように書かれている」性暴力を助長するネットや報道の問題点「一度、性暴力に遭った女性は繰り返し遭う」友人や家族が被害者になったら、どうすればいいか相手がセックスに合意していたと思ったから無罪? 強姦罪の立件が難しい理由これ以上、性犯罪被害者を出さないために 加害者の治療と家族の役割15年にわたる実父の強姦が黙殺された、「栃木実父殺し事件」の時代