カルチャー
久保友香氏インタビュー

“盛る”科学技術が女子に与えたモノ――スノー大流行の要因は「自撮り=ナルシスト」の打破

2017/03/04 19:00

■技術の発展によって、女の子の自意識が変わった

 もっとも「自撮り=ナルシスト」という批判そのものも過去のものになりつつある。それには次のような経緯があるという。

 2006年から女子高生の間で「Decolog」「CROOZ blog」といったケータイブログがじわじわと普及し、08~09年あたりにピークを迎え、一般の女の子たちが不特定多数に向けて情報を発信する時代になった。当時のケータイは、解像度や加工技術の問題から、あまり“盛れない”。そこで、女の子たちはプリントシール機で撮影した写真をこぞってアップするようになったという。

「プリントシール機は、09年にデカ目加工がピークとなり、完全にリアルとバーチャルの顔が分離してしまいました。当時ブログをやっていた子は、リアルのクラスメイトにはブログの存在を明かさず、バーチャルのアイデンティティを重視する傾向にありました。しかし、ネット掲示板などで、ブログ読者から『あの子の顔を実際に見たけど、ブスだった』『サギりすぎ(詐欺のようだ)』と叩かれるケースが多発するようになったのです」

 転機となったのは11年、ネットワークと画像処理という2つの方向の技術革新だった。

「ネットワーク面では、ブログからSNSへ移行し、不特定多数への発信ではなく、身近な人とのコミュニケーションも重視されるようになりました。その影響により、女の子たちは、リアルで見られても批判されない程度の“盛り”を狙うようになったのです。そのニーズに応えるよう、プリントシール機の画像処理技術も向上し、ナチュラルな加工を売りにした機種『LADY BY TOKYO』が大流行しました」

 “盛り”の欲求の裏側には、常に技術の革新があった。程度の差はあれ、長らく目を大きくする加工は続いているのも、単に「かわいい」というだけではない理由がある。

「私は、女の子たちが大きな目を求めるのは、目は大きく加工しやすいからだと考えています。逆に、江戸時代の化粧品は白粉が中心で、まぶたを白粉でぼかすなどして、目を細く見せやすやすかったから、細く見せることを求めたのだと考えています。明治・大正時代に黒い化粧品が生産されるようになったので、目を大きくする方向に向かった……という。現代においても、目元はアイシャドウ、アイライナー、つけま、カラコンと、たくさんの化粧品があるからこそ、微調整がしやすい。それにより、友人と協調したり、あるいは少し個性を出したりすることの調整も行っています」

 ところが、目中心の“盛り”に、近年変化が起きているという。

「リップとチークを重視する方向に変わってきました。SNSの普及によって、個人の“盛り”よりも友達との仲のよさをアピールする傾向が強まってきたためです。女の子たちの間で、ペアルックをする“双子コーデ”が流行していますが、リップとチークをお揃いにすると、顔の双子感はかなり強まる。コミュニケーションを円滑にするためにグループで盛って一体化しているのです」

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