江角マキコ“不倫疑惑スキャンダル”を通して露見した、女性が羨む“自然体”の落とし穴
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「相手の男のことは知っています」江角マキコの夫・平野眞氏
「女性自身」(光文社、2月7日号)
90年代、今井美樹が“自然体ブーム”を連れてきた。太い眉、顔の半分はあろうかという大きな口に真っ赤な口紅を塗り、洗いざらしの白いシャツとデニムをはいた今井の“自然体”に、多くの女性が心を奪われた。江角マキコも、その流れで世に出た1人である。
江角といえば、『ショムニ』(フジテレビ系)を思い出す人は多いだろうが、逆の言い方をすると、代表作は『ショムニ』しかないともいえる。権力に屈せず、弱い者いじめをせず、仲間と自分の自由を大事にする……そんなドラマの主人公・坪井千夏のキャラクターを、江角本人と重ね合わせた視聴者は多かったことだろう。
よくも悪くも『ショムニ』のイメージから脱却できなかった江角は、バラエティ番組に活路を見いだし、ご意見番にポジション替えをする。この転身の裏には、江角の自己主張の強さに加え、フジテレビのディレクターとの再婚や、2人の子どもが名門小学校に合格したことも加味されているのではないだろうか。収入が安定している、仕事のパイプともなるべき存在の夫を得て、優秀な子どもを育て、美貌も衰えを見せない。『私の何がイケないの?』(TBS系)で、江角が年長者にも説教をかますことができたのは、そんな“完璧な母”としての実績が十分だったからといえるだろう。
しかし2014年、「週刊文春」(文藝春秋)の報道で、風向きが変わる。長嶋一茂夫人とママ友トラブルを起こした江角が、マネジャーに命じて、長嶋宅に「バカ息子」と落書きさせたという疑惑が報じられ、江角は窮地に陥る。マネジャーが勝手にやったことと釈明したが、イメージダウンは避けられず、バラエティ番組やCMを降板。子どもも転校を余儀なくされた。
追い打ちをかけるように、16年、「週刊新潮」(新潮社)に、江角が億単位の金額の投資詐欺にあっていたことを報じられる。そして、とどめとなったのが、「女性自身」の不倫疑惑報道だ。江角が夫と2年前から別居していること、投資詐欺で有罪判決を受けた既婚男性、つまり“自分をだました相手”と江角がW不倫をしているという疑惑をスクープされたのである。江角はFAXで不倫を否定し、同時に引退を発表した――。
こうして、江角の芸能人人生は幕を下ろしたわけだが、女性の好む“自然体”の難しさについて考えさせられる。女性の好む“自然体”は、「忙しい(が、金はある)」「誰もができることに、ひと手間かける」「業績を上げている」の三本柱で成り立っている。