「日本が北朝鮮のような独裁国家になるかもしれない」映画『太陽の下で』の監督が語る未来
北朝鮮の人々の生活を追いかけたドキュメンタリーはやらせだった!? 映画『太陽の下で―真実の北朝鮮―』は、ロシアのヴィタリー・マンスキー監督が撮影した北朝鮮の一家族を映し出したドキュメンタリー。撮影前の台本は北朝鮮側に修正され、撮影後の映像も検閲を受けることになっていたが、マンスキー監督は検閲前にフィルムを外部に持ち出して、この映画を完成させた。そこに映し出されていたのは、幸せ家族を装うように北朝鮮側のスタッフに指示されている家族の姿を隠し撮りしたもの。『太陽の下で~』は、北朝鮮の幸せ一家のやらせ映像を暴露した驚きのドキュメンタリーなのだ。
そこで来日したヴィタリー・マンスキー監督にこの映画の制作意図、監督の目に映った北朝鮮の人々、そしてこの映画が、日本人の私たちに投げかけていることを語っていただいた。
■北朝鮮の人々は実に幸せそうで、そこにはひとつも嘘はありません
――この映画は撮影許可を得るまでに2年間、家族のドキュメンタリーを撮影するのに1年を要したそうですね。北朝鮮の映画を撮影することが困難な道になることはあらかじめ覚悟されていたと思いますが、マンスキー監督はなぜ北朝鮮の家族のドキュメンタリーを撮影しようと思われたのでしょうか?
ヴィタリー・マンスキー監督(以下、マンスキー監督) 私と私の両親はソビエト連邦の出身で、スターリン主義の独裁国家の中で育ちました。私は映画というタイムマシーンに乗って、自分たちの過去を見てみたいと思ったのです。北朝鮮を選んだのは、独裁国家の体制がある国が北朝鮮だったから。でも実際には、私が見たかったものはそこにはありませんでした。宇宙船に乗せられて別の国で降ろされたような気持ちです。スターリン時代、全体主義に対して芸術家などは反抗をしていましたし、国家権力と社会の間には矛盾したものがありました。しかし、北朝鮮にはそれがないのです。国民はみんなとても幸福そうでした。それを幸福と呼ぶのであれば。
――確かにこの映画で、北朝鮮の家族の方たちは、数々の指示に素直に応じていましたね。そこには不満な様子は全くありませんでした。監督は彼らの笑顔は本物だと思いましたか? 撮影時のことを教えてください。
マンスキー監督 彼らは「ああしろ、こうしろ」と指示されていることに対して素直に応じていましたし、全く反抗心の芽も感じられませんでした。というか、「なぜこんなことするんだ?」という思考が全くないようでした。とても厳しい決まりに対して、従順であることの体制が出来上がっているのです。北朝鮮の方たちは、この映画の8歳の女の子ジンミと同じように、幼いときから従うように教育されて育ちますから、疑いを持つことはないのでしょう。
私と家族が生きたスターリン時代は、表向きは同じように全体主義を教えられましたが、家に帰れば自由がありました。しかし、北朝鮮には家庭においても自由はない。抜け道はいっさい用意されていないのです。