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「金は出さない、責任も取らない」キュレーションサイト運営企業の本音

2017/01/11 15:00
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Photo by Sonia Belviso from Flickr

 2016年末に起きたDeNAが運営するキュレーション(まとめ)サイトでのパクリ騒動は、類似のサイトを運営する企業にも大きな影響を与えている。

「キュレーションサイトは、ソーシャルゲームの売り上げが停滞し始めたDeNAを救った救世主のようなコンテンツでしたから、それにあやかろうと2匹目、3匹目のドジョウを狙って企業が群がりました。成功例にイナゴのように群がるのは、ファッション、出版界、芸能界、あらゆる業界で同じですよね。しかし、しょせんは手っ取り早くお金が欲しいだけの“にわか”にすぎません」(経済ライター)

 実際、DeNA以外の企業が運営するサイトも問題がある記事を削除するなどの対応が行われており、新たに制作する記事に関しては、ライターへの発注の仕方が変わったという。

「あの騒動以降、記事の発注の際に『必ず情報の出どころを明記するように』という注意が入るようになりましたよ。この間、『ペットにあげてはいけない食事』という記事の注文を受けたんですが、クライアントからは厚生労働省のデータを基にして、そこに書いてあること以外の情報は書くなと言われました。馬鹿な話ですよね(笑)。それなら、厚生労働省のサイトを見ればいいだけなのに」(フリーライター)

 そうした投げやりともとれる企業側の態度の裏にあるのは、「責任はとりたくない」という方針だ。独自の実証データをとったり、専門家に発注するだけの予算はなく、だから、信頼できる組織や企業が出したデータを“出典”として記載するわけだが、それではDeNAがやっていたことと、何も変わらないことに気づかないのだろうか?

「以前、企画を出す際に、サイトの方向性を担当者に聞いたことがあるんですが、明確な答えは返ってきませんでした。担当者も自分が指示した記事が原因で、アクセス数が下がった場合の責任をとるのが怖いんでしょうね。具体的な指示はない、それなのに上げた記事に対しては文句を言ってくるのだから、やる気になりませんよ。私のライター仲間も、そうしたサイトからは手を引き始めています」(前出・経済ライター)

 プロのライターが離れている、もうひとつの原因が、ギャラの問題だ。DeNA問題を受けて、多くの企業が自社サイトの記事の見直し、質の向上を図っているが、そのために予算が追加されるわけではないという。執筆する側からしてみれば、ギャラは前と一緒、しかし仕事の質は上げろと言われているわけだから、たまったものではないだろう。

「記事の質は上げたい、でもコストを上げたくない。そんな中で作られた記事が面白いわけありませんよね。しかし、WELQのような専門的な記事を扱うサイトだと特に、一度信用を失ってしまったら終わりです。だって、パクリのいい加減な記事を載せていたサイトの情報を信じようとは思わないでしょう? ほかの企業に関しても、DeNAのような失敗を犯すのを恐れる気持ちは、わからないでもありません。しかし、ここでテコ入れをするか、それとも撤退するか、何らかの決断は必要でしょう」(同)

 オリジナルを生み出すには、それなりの対価が必要だ。多くのキュレーションサイトは、1文字1円にも満たない、恐ろしく安いコストで記事を量産し、利益を得てきた。しかし、その安直な体制が露呈してしまった今、これまでのツケを支払うことになっている。

最終更新:2017/01/11 15:00
パクリ・盗作 スキャンダル事件史 (宝島SUGOI文庫 A へ 1-83)
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