コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

藤原紀香は、なぜ“イタい人”化したのか――“秀才”の座から転落した女が復活する方法

2017/01/05 21:00
かつて紀香には、もてはやされた時代があった……

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「みんなに愛されないとイヤみたいなところがありました」藤原紀香
『バイキング・ゴールデン!』(フジテレビ系)

 さんざん腐しておいてなんだが、藤原紀香はどうして“こんなこと”になってしまったのだろうと考えることがある。

 若い方はご存じないだろうが、1990年代後半の紀香は本当に輝いていた。丸の内界隈では誇張表現ではなく、紀香の当時の髪型“ウルフカット”を模したOLであふれ、紀香がイメージキャラクターを務めた化粧品はバカ売れ。紀香を好きとまでは言わなくても、芸能人としての紀香を嫌いという人はほとんどいなかったように感じている。

 しかし、今の紀香は、何をしても叩かれる。

 皇后・美智子さまの赤十字ご視察の際に、なぜか紀香がロイヤルルックで迎えるなど、叩かれやすいタを提供しているのも事実だが、バッシングの中には、いちゃもんにしか思えないものもある。例えば、片岡愛之助出演の舞台で、紀香が贔屓筋に挨拶するためロビーに立っていたところ、握手を求められ、それを断ったそうだ。混乱を避けるための配慮だったというが、その姿と、観客に囲まれて写真撮影をされている様子を「女優きどりで撮影会」とバッシングされたのだ。しかし、求めに応じていたら、「前に出すぎている」と批判されていただろう。

 おそらく、この凋落を一番不思議に思っているのは、紀香本人なのではないか。『バイキング・ゴールデン!坂上忍と怒れるニュースな芸能人』(フジテレビ系)に出演した紀香は、司会の坂上忍に「自分が何かすると叩かれる意識はあるか?」と質問され、「意識はないです」と、バッシングは予想外のものであると答えた。さらに「(かつては)みんなに愛されないとイヤみたいなところがありました」「(その考え方が変わったのは)結婚してからだと思います」と、伴侶を得たことで自身にも変化があったと話していた。

 「みんなに愛されないとイヤ」――紀香のこの言葉を聞いて思い出すのは、1990年に上梓された二谷友里恵の『愛される理由』(朝日新聞社)である。今や実業家として活躍する二谷だが、有名俳優・二谷英明と女優・白川由美の一人娘で、郷ひろみの初婚時の夫人でもある。同書は、二谷が自分の生い立ちと郷に出会って結婚し、第一子を出産するまでを書いたもので、70万部を超えるベストセラーを記録した。

 面白いのは、この本には「愛される理由」めいたものが一切書いていないことである。

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