結婚さえできればいいと思っていたけど、「入籍したら仕事が減る」!? 婚姻届の魔力
女が人生の中で最も自分を見失い、頭がおかしくなる時期。それは20代後半から30代の嫁入り前――かもしれない。どうしても結婚したい、結婚ッ!結婚ッ!と、何者かによって、ひどく重い、妙な呪いをかけられてしまうからである。
『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)の著者で、イラストレーターの水谷さるころさんも、そんな呪いにかかり、「結婚したい」と相手に迫って30歳で結婚。そのままバリバリと仕事を続けるつもりが、周りからは旦那さんに養ってもらうと勘違いされ、これはマズイと、CSのテレビ番組から世界一周の仕事をゲットし、30日間の海外出張へ。帰国後、ある飲み会に出て、仕事の話をすると「俺の妻が1カ月も家を空けるなんて言ったら許さないもんね」「夫さんは偉いよ。妻が働くのは女のワガママでしょ」と嫌みを言われ、あぜん。女の行動は、夫の許可制だったのか!?
結婚生活も、思い描いていたような素敵ライフには程遠く、3年半で離婚。その後、法律婚には懲りて、36歳の時に“事実婚”で再婚し、38歳で出産。現在は2歳の子どもを育てる母でもある。結婚したら、女性には何が待ち受けているのか? さらに、これから増えるかもしれない“事実婚”について、お伺いした。
■「結婚=男の経済力にぶら下がる」と考える人は少なくない
――なぜ30歳を過ぎると、女子は結婚したくてしょうがなくなるんでしょうね?(笑)
水谷さるころさん(以下、水谷) この時期は、女が一番頭のおかしくなる、魔の時期ですよね(笑)。スピリチュアルが大好きなので、超煮詰まっていた時には、出雲大社によく出かけていました。それで、本当に結婚ができたので、実際「すごいな!」とも思ったんですけれど。
なぜそんなに結婚したかったかを振り返ると、私の場合、20歳からフリーランスで働いていて、生活も仕事もひとりで、毎日会う人が欲しい、家族が欲しい、ということが一番でした。会社や共同事務所とかがあれば、まだ社会が広がっていって、追い詰められる感じでもなかったと思うんですが、事務所を持つと費用がかかるし、そういう機会もなかったんですよね。小さい時は30歳になったら結婚をして、子どももいるものだと思ってたのに、「やばい……こんな生活のまま独身だったら死にそう」と思い、「結婚」が何かを考える前に、「なんとか結婚しなきゃ」と、自分で呪いをかけていたんだと思います。
――本の中で「結婚したら仕事の依頼が減った」と書かれていて、とても気になりました。
水谷 これは、離婚してから、結婚のせいだとわかったんです。とはいえ結婚しても、ゼロにはなりません。取引先の担当者が既婚女性の場合は、結婚しても当然働くつもりとわかっているので、お仕事をくれます。でも、「結婚してから、なんとなく仕事もらえなくなったけれど、どうしてかな?」というような取引先もあるわけです。自分の実力がないからなのか、旬ではなくなったのか、何か悪いことしてしまったかな……などと考えていたんですが、連絡が来ないからわからない。けれど、みんなに離婚した時に「離婚した」と伝えたら、数人から「飲みに行きましょう」と連絡があり、「すっかり悠々自適な生活をしているんだと思っていましたよ」と言われたんです。本の中では、いろいろとマイルドに描いていますが、「結婚=男の経済力にぶら下がる」と本気で考える人が、少なからずいることに驚きました。
――それで、バリバリ働くという意思を示すべく、仕事の会合には頻繁に参加して、ブログを積極的に更新していたら、「最近、夜遊びしすぎではありませんか?」と、知らない人から書き込みがあったんですよね。一体何なんですか!?
水谷 本当にあったんですよ。モニターに向かって、思わず「ダレだよ、お前!?」ってツッコミました(笑)。コメントを書いてくれた方は、以前、テレビ番組に出ていた時のファンの方だと思うんですね。
おそらく私のことを番組で知って、ブログを見たら、結婚をしたにもかかわらず、夜に飲み歩いている。それを見て、「あれ? ちょっと違うんじゃないか」と思って、書き込んだと思うんですね。百歩譲って、そう思うところまではオッケーだとしても、実際書き込まれると、「はぁ!?」と思いますよね。こっちにも色々あるんだよ、と。
――そういう方には、どう対処しているんですか?
水谷 とやかく言われたら、心の中で「うるさいな」と思うようにしています。そうなのかな……?とプレッシャーに流されてしまっても、良いことはひとつもないですし。とやかく言ってくる人は、私の人生をどうにかしてくれるわけもなく、自分がこうしてきたんだから、こうした方がいいと言うだけです。言っている人自身の影に対しての言葉なので、気にしなくていいと思います。