モテ系・赤文字系が凋落、「mer」はヒット! 2016年の女性誌動向5大トピックを徹底分析
■付録ブームの現在
――宝島社が先頭を切って始めた付録は、いまや定番となりました。
栗田 宝島社は、半年前くらいから、女性ファッション誌の表紙を、ネット販売のアマゾンに、発売日前の予約販売では載せなくなりました。表紙の代わりに、付録の写真を出しています。初めてみたとき、なにかの間違いかと思ったほど驚きました。付録に敏感な消費者へのアピールなのでしょう。付録に関していえば、宝島社以外で元気良いのは、新潮社のローティーン誌「ニコ☆プチ」(06年創刊)と「nicola」。新潮社は伝統ある版元ですが、ファッション誌参入の歴史は浅い。両誌は10年後にも確実に残る雑誌だと思います。ファッション誌では新興勢力の宝島社と新潮社が付録の企画や制作に強く、売り上げに大いに貢献しているようですね。対照的に、大手や老舗出版社は弱い傾向があり、苦戦しています。
■webと女性誌のこれから
――webサイトやアプリが人気だった「MERY」(現在は閉鎖)が、雑誌を創刊したのも今年です。
栗田 雑誌「MERY」は、アマゾンのライフスタイル雑誌ランキングで102位です。ランキングの1ケタ台に「an・an」(70年創刊、マガジンハウス)や、「sweet」があって、20位あたりに「暮しの手帖」(暮しの手帖社)などがあり、その中で102位となると、あまり売れていないのかもしれません。まだ判断は早いのですが、ウェブサイトとして運営していた方が良かったのかも。キュレーション・サイトとしては、ずば抜けて好調で、「MERY」と「@cosme」をみれば、雑誌を読まなくても、それぞれ現代日本のメイクとコスメが全部わかる、という一人勝ちの状態でした。おそらくは、経営者あるいは制作スタッフが、紙媒体への強い期待と夢を持っていたと推測されます。ネット全盛時代に紙で出版できるということは、高級ブランドと同じ意味を持っているのです。喩えていうならば、ネットはユニクロやしまむらなどファストファッションに相当し、紙媒体はエルメスやシャネルなど高級ブランドにあたります。その立ち位置は限られ、極めて希少な存在。昔からその場所を占めてきた老舗か、まったく新しいコンセプトで登場するか否か。「MERY」の今後の成功を祈りたいですね。
――「情報はwebでタダで得られるから、お金を出して雑誌を買う必要がない」という声も多いです。
栗田 情報にお金を払わないのではなく、いままで雑誌代に支払ってきた分が通信料に代わってきたのでしょう。ネットだと、インスタグラムは個人がアップする写真が桁違いに充実しているので、おしゃれな若者層には、とても便利です。既存の雑誌もSNSのアカウントを持ち、Twitterやインスタをやってはいるものの、結局、それは紙媒体の寿命を早めているのに過ぎません。いまは紙媒体の雑誌からwebへの移行期。では、紙媒体の女性誌はまったくなくなってしまうのか? と考えると、買うことに価値を見いだせるような希少性のある「ブランドとしての」雑誌だけが残ります。紙媒体最盛期の40誌~50誌体制から、ローティーン誌、ヤング誌、ヤングアダルト誌、ミドルエイジ誌、全部併せても15~20誌残るかどうか、というところでしょう。