まやかしのヒット作を暴く!

『ハイロー』『おそ松さん』2016年ヒット作を“元アウトローのカリスマ”瓜田純士が斬る!

2016/12/31 19:00

uribo
『ビーバップ』の菊リンは良かった、と瓜田氏

――作品の話に戻りますが、ストーリーはどうでしたか?

瓜田 まったく頭に入ってこなかった(笑)。時代設定がいつなのかも、どこで何が起きてるのかも、敵味方の関係もわからなかったです。そもそもこいつら、何歳という設定なんですかね? 高校生? 違うか。まぁ、どうでもいい。ストーリーを追おうという気さえ起きず、ほとんど流し見してました。不良をテーマにした誰かのPV(プロモーションビデオ)とかだったら成立するんでしょうけど、物語にされちゃうと、正直キツいなぁ。

――なぜ頭に入ってこなかったのでしょう?

瓜田 そもそも俺がEXILEのメンバーをよく知らないってのもあるけど、同ジャンルのイケメンばかりで、見分けがつかないんですよ。だから話も飲み込めない。同じ不良映画でも『ビー・バップ・ハイスクール』はわかりやすかったんですけどね。太っちょとかガリとかブサイクとか、顔に傷がある奴もいたりして、本物の不良っぽくて面白かった。キャラに癖があって、キャラへの愛着が生まれれば、話も追っかけたくなるけど、 『ハイロー』にはそれがなかったですね。

――瓜田さんから見て、「本物の不良っぽさ」が漂っている出演者はいましたか?


瓜田 若手の主要キャストはどれもこれも、アウトロー感に欠けますね。たとえば海外の黒人ラッパーのPVを見てても、「こいつ、刑務所経験あるな」「こいつ、女の取り合いで拳銃取り出した経験あるな」って奴は、やっぱオーラに出るから目を引きます。でも、パチモンはすぐバレる。腕が太い黒人にバンダナさせときゃいい、ってもんじゃないんです。その点、『ビー・バップ・ハイスクール』の清水宏次朗なんかは、ハマってましたよ。「うん、いるいる、こういう不良」って感じで。菊リンもよかった。仲村トオルだけはハマってませんでしたけどね。『ハイロー』は仲村トオル同様、真面目なイケメンに不良の格好をさせてるだけって感じで、迫力が全然伝わってきませんでした。

――格闘シーンは迫力満点だったと思うのですが。

瓜田 格闘シーンって、乱闘アクションですよね? 集団対集団で戦うシーン。ああいうのって、好きじゃないんですよ。幼稚くさいし、嘘くさい。お前らが格好いいのはわかったから、ケンカはやめてダンスでもしてろ、って感じですね。あと嘘くさいといえば、序盤のほうで、デコ(警察)が不良のたまり場に現れるシーンがあったでしょ? 現実ではああいう場に、デコが1人で現れるなんてことは絶対ない。デコは2人以上で動きますから。

――アクションも邪魔で、ディテールもダメだと。

瓜田 ええ。そのへんで完全に興醒めしちゃって、鑑賞意欲が削がれちゃったんですよ。乱闘シーンを多く入れればいいってもんじゃなく、もっと言葉の掛け合い一つでヒリヒリさせてほしかったんだけど……。まぁでもこの作品を支持する人たちの多くは、ストーリー性やヒリヒリ感なんか求めてないんでしょうね。イケメンたちが、スタイリッシュなアクションをして、スタイリッシュなBGMが流れてれば満足。そういう一つのパッケージというかね。ホストクラブのショータイムみたいなものかな。でもこれ、流行るのもわかります。


――なぜですか?

瓜田 だって日本のトップパフォーマーや、日本のファッションリーダーたちがこぞって出演してるんですから、そりゃ女はキャーキャー言うでしょうし、若い男も憧れるでしょう。こんなところで俺が何を言ったところで、人気があるってことは、こういう作品に魅力を感じる層がそれだけ広いってことです。ただ、どうしてこんなにつまらないんだろう? つまらないのには理由があるはず。これだけカネをかけてるのに……。価値観が違うってだけかな。

――EXILEに敵対心があるとか?

瓜田 ないない。EXILEはストイックで格好いいと思うんですよ。縦社会で、体も鍛えてて、パフォーマンスも洗練されてるイメージ。俺と同じイケメンとはいえ、畑が違うので嫉妬心もない。なのに『ハイロー』に感情移入できないのはなぜなのか? たった今、答えが出ました。

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