カルチャー
ギャンブル依存症問題を考える会 代表・田中紀子さんインタビュー

「ギャンブル依存症には遺伝的要素も強い」祖父、父、夫も陥った経験者が語る恐ろしさ

2016/12/30 17:00

■現在のギャンブルは射幸心を第一に考え、依存症に陥りやすいつくり

――先日、カジノ法案が成立しました。日本にカジノができることによって、ギャンブルをする人は増えるのでしょうか?

田中 そこがすごく難しくて、実際にカジノができるのが今から4~5年後なわけですよね。でも、“ギャンブル依存症”という問題は今起きていることです。だから、今からカジノができるまでに、どれだけの対策ができるかということが大きな分岐点になると思っています。これがおざなりなものだったら、当然ギャンブルをする人は増えるでしょう。

 でも、諸外国でもカジノができるまでの間に対策をしっかりやることで、ギャンブル依存症自体は減ったという地域もあります。今、これだけ既得権が蔓延している日本で、どれだけメスを入れられるかということが重要だと思います。

 新しいカジノができるために、なんで自分たちが割を食うの? なんで既得権を手放さなきゃいけないの? ということで、これから反発があると思います。政治家も、ギャンブル依存症対策をやるとは言っていますが、既得権を持っている農林水産省とか国土交通省とか、警察とかが果たして本当に手放すのか? という疑問がありますよね。

 ギャンブル依存症対策をしようということになったら、売り上げが落ちることが予想されるし、ギャンブル業界は政治家の天下り先になっているので、彼らは業界を潰しちゃならないんです。

 射幸心をよりあおるギャンブルではなく、もっと広くいろいろな人が楽しめるギャンブルにしたらいいのにと私は思います。今は、ギャンブルが安全な形で楽しめるようなつくりになっていません。

――つくり自体が安全でないとはどういう意味ですか?

田中 売り上げを上げるというのは、ギャンブルにどれだけハマるかというシステムの上に成り立っているからです。私が競艇にハマっていたときは“連複”という、1位と2位を当てるお金の賭け方しかありませんでした。そこに最近は1位から3位までを当てる“三連単”が出てきました。5レース全部の1位を当てる賭け方もあります。なかなか当たらない代わりに、当たったときの金額が大きいので、みんながハマっていくようになっているんです。そのような形式がどんどん知らない間に、こそこそと法改正されて通過、導入されています。

――怖いですね……。

田中 もう少し射幸心を落とせば、ハマってしまう人が抑えられる代わりに、もっとたくさんの人が楽しめるようになるのではないでしょうか。ただ、それまで刺激的なものを求めてやってきた人にはつまらなく感じ、売り上げは落ちるでしょう。熱狂的なギャンブルファンが離れていく可能性はありますが、そのほうが息の長いものになるのではないかと感じます。

――つまり、ギャンブルそのものが悪いわけではないということですか?

田中 そう思っています。ギャンブル依存症というのは、ギャンブル場がなくても、株とかFXとか、なんでもギャンブルに変えてしまうんです。そうなってくると経済行為自体を否定する状況になりますし、ギャンブルを禁止したからといって、依存症対策はうまくいきません。闇に潜っていったり、他のものに代替えしていったりということになってしまいます。

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