「ギャンブル依存症には遺伝的要素も強い」祖父、父、夫も陥った経験者が語る恐ろしさ
めかしこんだ一部の富裕層が夜な夜な集う大人の遊び場。そんな現実離れしたイメージのあるカジノだが、日本でのカジノ合法化を目指す、通称カジノ法案(IR法案)が2016年12月15日、国会にて可決、成立した。現在の日本では、賭け事は禁止されているものの、現実には法のグレーゾーンを縫うようにパチンコや競馬、競艇など、多くのギャンブルが身近にあり、ギャンブル依存症に苦しんでいる人もいる。日本にカジノができたら、ギャンブル依存症の問題はどうなってしまうのか。祖父、父、夫がギャンブル依存症で、自らもギャンブル依存症に陥った経験をもつ、「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表、田中紀子さんに話をうかがった。
■わかっているのにやめられない、ビギナーズラックなどなくてもハマってしまう
――ギャンブル依存症はれっきとした病気ということですが、その定義とは、ギャンブルに使うお金をコントロールできない状態ですか?
田中紀子さん(以下、田中) そうですね。本当に“コントロール不能”という状態です。でも、操り人形のように「気がついたらギャンブル場に来ていた」というのではないので、依存症ではない人にはその“コントロール不能”というのがよくわからないのだと思います。
依存症と聞くと、一般の人は「だらしがない人」や「バカな人」に見えるんだと思います。でも、わかっているのにやめられないんです。例えば、蚊に刺されたときって掻いちゃいけないとわかっているのに掻いてしまうじゃないですか。掻きたくて掻きたくてしょうがないという強迫観念。そして、掻くと一瞬だけ楽になる。そのムズムズした感じが強烈で、掻かずにはいられない、イライラ・ソワソワ感がつらいんです。
――わかりやすいたとえですね。私はギャンブルらしいギャンブルをしたことがないのですが、以前ロト6を何度か購入しました。しかし、「当たらないしムダだな」と思ってすぐに購入しなくなったのですが、ギャンブルをやる方たちは一度当たるとのめり込んでしまうのでしょうか?
田中 そのへんも単純な話ではないです。みなさんが思っている「当たらない」という理屈はギャンブラーもわかっています。だって、普通の人よりも回数を経験しているからわかるに決まっているんです。わかっているけど習慣になり、気づいたときにはやめられない。ギャンブルにハマり込むのは単なる“発病”だと思うんです。
大当たりが出て、その興奮が忘れられずにやめられないと思われがちですが、そうとも限りません。「勝ったときのことだけ覚えている」と言われますが、第一勝ってないし(笑)。ビギナーズラックなんてなくてもハマってしまいます。