キャバクラ経営者がキャバ嬢にハマらなかった理由 夜の世界の本音と建前
■熱心な接客に勘違いした客がトラブルを起こす
キャバクラの世界を舞台にしているドラマ『キャバすか学園』(日本テレビ系)の第5話では、カタブツ(岡田奈々)に惚れた客が、ほかの客に接客する彼女に嫉妬するというエピソードが描かれた。これはまったくのフィクションというわけではなく、キャバ嬢たちの熱心な接客に客が勘違いして起こすトラブルを、M氏は何度も見てきたという。
やがて店をたたんだ後、M氏はもとからやっていた外商一本に絞った。そして、“自分が関わる店のキャバ嬢には絶対にハマらない”ことを自分のルールにしてきたという。
「今では『おじちゃん』と呼ばれる年齢になりましたが、若い頃はモテたこともあったんですよ(笑)。女の子たちも店のスタッフでもない、客でもない私に対しては素の自分を出せるから、接客しながら話を聞いているうちに、告白めいた言葉を言われたこともありました。でもね、それは結局、普段の寂しさを埋める代償行為のようなもので、そこにつけ込んだら、キャバ嬢に手を出すろくでもない黒服や店長と変わりません。
あと、『店に来て指名してよ』なんてことを言われたときもありました。そこの経営者にも『うちで稼いでいるんだから、少しは金を落としていけ』とかね(笑)。経営者の方が言っていることは冗談でも、キャバ嬢の方は意外と本気だったかもしれません。でもね、それをすると仕事とプライベートの線引きが曖昧になってしまうし、彼女たちがどれだけ本指名をとるために必死になっているかを知っているから、ひとりの子を指名したら他の子との関係が悪くなりかねないですからね。だから、自分の取引先とはぜんぜん関係ない店に遊びに行き、そこでうっぷんを晴らしていました(笑)」
キャバ嬢たちの言葉や態度には、常に本音と嘘が入り交じっている。それは、客に疑似恋愛をさせ、ひとときの癒やしを提供するキャバクラという店の性質上、仕方のないことだ。
「私みたいに長く夜の世界に関わっていると、そうした本音と建前が透けて見えてしまうんですよ。同業では店の子にハマって口説き落としたなんて奴もいましたが、この世界で働いていると、女の子の態度の裏にあるドロドロとしたものや、もの悲しさが気になってしまう。ある意味、そんなことを気にせず楽しめていた頃が懐かしくはありますね」