元キャバクラ経営者が見た夜の世界の裏側2

キャバクラのルールを破った黒服の末路は? “深くて暗い”悲惨な行方

2016/11/10 15:00
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Photo by Joshua Rappeneker from Flickr

これまでにも数々のドラマや漫画などの題材になってきたキャバクラだが、10月から放送中のドラマ『キャバすか学園』(日本テレビ系)では、国民的アイドルAKB48とその姉妹グループがキャバ嬢を演じている。“夜の蝶”をモチーフとする作品では、さまざまな人間模様が描かれ魅力的だが、そんな世界の裏側を、業界歴40年の元経営者が明かす。

■黒服は、キャスト以上にルールに縛られている

 一般企業と違い、働き手の自由度が高いように見えるキャバクラの仕事だが、実は店やグループごとにさまざまなルールを設けている。そうしないと、経営が立ち行かなくなるからだ。

「キャスト(キャバ嬢)が連絡もなしに遅刻したら罰金、欠勤したらその日の稼ぎ以上のペナルティを取られる。そのくらいは、どこでもやっています。キャストがしっかり働くよう、店もいろいろ考えます」(風俗ライター)

 しかし、キャバ嬢がいなければ、店は成り立たない。そのため、致命的なルール違反をしない限り、締め付けはそれほど厳しくない。どちらかといえば、キャバ嬢よりも厳しいルールが課せられているのは黒服たちだと、水商売の女性たちにドレスやスーツを売る外商として約40年働くM氏は語る。


「私たちの仕事は、キャバ嬢たちの空き時間に商品を売るわけですが、商品に夢中になって、なかなか店に戻らない子もいるんです。そんなとき、黒服の子たちが呼びにくるんですが、いろんなタイプがいますよ。『〇〇さん、指名なんで、店に戻ってください』などと言う穏やかなタイプもいれば、『早く戻れよ』と怒鳴りつける乱暴な奴もいる。私に対しても『外商風情が、店の邪魔すんなよ』と、あからさまに邪魔者扱いしてくる奴もいます(笑)。でもこっちもそんな態度は慣れっこだし、店の経営者と話をつけて商売しているし、大概後で怒られるのは向こうですからね」

 自分の子供より年下の黒服に無礼な態度を取られたら頭にきそうなものだが、M氏は腹も立たないという。そんな連中も働き続けるうちに態度を改めるし、外部の人間にそんな態度を取っている連中は、自然と店から消えていくからだという。

「キャストの子たちもいろんなルールに縛られていますが、それ以上に、黒服の子たちはルールに縛られています。接客、女の子への態度、フロア内での振る舞い方とかね。上の人間がまともなら、外部の人間への礼儀がしっかりしていない奴は排除されます。そういう奴って、だいたい女の子への態度も悪いから嫌われるし、女の子との信頼関係がないと、言うことを聞かせられませんから。かといって、恋愛感情を持ってはいけないし、持たれてもいけない。なかなかつらい立場だと思いますよ」

■店内での色恋沙汰は、キャバクラ最大のタブー

 黒服とキャストの恋愛は、ご法度。よく聞く言葉だが、本当にあることなのだろうか? 男たちを手玉に取るキャバ嬢たちが、そう簡単にひとりの男になびくとは考えにくいのだが……。


「キャバ嬢たちは、何かとストレスを感じることが多いんです。嫌な客とか、プライベートの恋愛がうまくいっていないとかね。キャバ嬢だって女の子ですから、そんな弱っているときに親身になって話を聞いてくれた相手には、つい心を開いてしまう。そこにつけ込んで色恋沙汰に発展したら、ルール違反になりますが……でもね、女の子の客のテーブル間の移動を指示するつけ回し(フロアマネジャー)とかになるなら、女の子に惚れられるくらいじゃないとダメなんです。その加減が難しいんですよ」(M氏)

 もし、その加減を間違えたら、キャバクラで最大のタブーである色恋沙汰に発展することもある。そうした場合、厳しいペナルティが科せられる。

「キャストに手を出したら罰金です。この話は有名ですよね。額は店によって違うと思いますが、だいたい100万円くらいかな? 法外な値段ですが、これは絶対にやらせないために、高額にしているんです。店内に彼氏、彼女がいたら、仕事に支障が出ますから。それでも、デキちゃう連中はいるんですが、うまくいっているときはいいけど、ケンカなんかしたら最悪です。前に、ケンカしたままお互い出勤して、客の前で言い争いをしたなんてバカップルもいました(笑)」(同)

 当然、その黒服とキャストにはペナルティが科せられ、黒服は店を異動することに。しかし、それはまだいい方だとM氏は言う。

「昔、オーナーがそっち系の店で、バカな黒服がオーナーの愛人だったキャストに手を出した。数日後、その黒服は、店から姿を消していました。マネジャーに聞いてみたら『罰金を払うために、別の場所で働いている』と、そして『しばらく女を抱く気にならないだろう』と苦笑いしていました。具体的に何をしたのかは、さすがに聞けませんでしたよ。今でこそ、そういう連中がオーナーの店は減りましたが、なくなったわけではありません。それに、逃げたとしても追い込みが厳しいから、それをわかっていてルールを破るバカは少ないです」(同)

■大きなトラブルを起こした者の素性は、業界中に知れ渡る

 ただ、少ないとはいえ、ルール違反を犯す者はいまだにいるらしい。ルールを破り続けた黒服には、どんな末路が待っているのだろうか?

「あちこちで色恋が絡むトラブルを起こす奴や、金絡みのトラブルを起こした奴は、グループ店なら全店舗で、従業員としても客としても出入り禁止になります。それにね、この業界は、横のネットワークが意外に強いんですよ。店同士の交流がなくても、何か大きなトラブルを起こした奴の素性は、たちまち知れ渡ります。悪質な奴の場合、別のキャバクラはもちろん、キャバレーや風俗、夜の商売の店では働けなくなるし、全国にお達しが回ることも少なくありません。そうなったら、この業界から足を洗うしかなくなります。それでも、ヒモになってしぶとく生きている奴もいますが、この商売しかやったことがない奴にとっては致命傷でしょう。なんでもありに見えるかもしれませんが、夜の商売のルールは、一般の人が思っている以上に厳しいんです」(M氏)

 ルールを破り、夜の街から消えていった男たちを、M氏は大勢見てきたという。どんな仕事でも、ルールという枠を超えたら、悲惨な末路が待っている。しかし、夜の商売のルールを破った者の末路は、一般の仕事のルールを破った者より、深くて暗いようだ。

最終更新:2019/05/21 16:46
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