人気ブランドの下請け業者は奴隷!? 109系の代表「C」凋落の真相
■企画だけ取って他メーカーに同じものを作らせる横暴
しかし、通販サイトなどネットを使う商売の場合、SNSなどでこうしたパワハラ行為を告発されるとサイトの存続にも関わるため、まだおとなしい方だという。もっとパワハラがひどいのは、店頭で商品を販売するブランドだ。
「私が取引していたのは109系の代表的ブランドCでしたが、あそこはトレンドに合わせて下請けメーカーが企画した商品を精査し、それを店頭に並べる『持ち寄り型』の商売を採用していたため、ひとつのヒットアイテムやイメージにこだわるブランドがバタバタ潰れていく中、売り上げを維持してきました。店頭に並べてもらえれば売れるし追加発注も来るから、こっちも必死で担当者のご機嫌を取っていました。でもね、そんなことをしていると、担当者が勘違いをするんですよ」(元メーカー勤務H氏)
H氏はアラフォー、当時の担当はまだ20代の女性だったという。あだ名やタメ口で話すのはまだ許せた。しかし、言動は次第にエスカレートしていったという。
「こっちがリサーチして作ったものを『ダサい』と言うだけで、こうすればいいというアドバイスや意見もなしに突っ返されることもしょっちゅうありました。でも、若い子のそうした直感はバカにできないから、腹は立つけど、まだいいんです。
一番許せなかったのは、向こうが気に入ったこちらの製品の原価が高いと、他メーカーに同じものを作らせて、『〇〇の方が同じものを安く作れる』と言われて企画だけ取られたり、利益が出ないくらい単価を下げられたりしたこと。その他にも『このサンプルを今日見たいから、(工場がある)大阪まで取りに行って』なんてアゴでこき使われたり、どう考えても素材の手配、縫製、納品まで2カ月近くかかる製品をひと月で納品しろと言われ、必死で駆けずりまわって1週間遅れで納品したら『納期遅れだ』と言われ、値引きされたりしたこともありました。結局、相手の横暴さに疲れて担当を外れたんです」(H氏)
■負のスパイラルに陥り売り上げが減少
その後、H氏の後任になった人物も心身を患って退社。誰もが担当につくのを嫌がるようになり、H氏の会社はCとの取引はやめたが、同じ理由で取引をやめた会社は少なくないという。
「Cのように売れているブランドには次々と業者がすり寄りますが、みんな横暴さに辟易として離れていきます。そうしていい製品を作る一線級のメーカーが離れると、次はそれより劣るメーカーと取引を始める、同じ理由でメーカーが離れる、今度はさらにレベルが下のメーカーと取引する……そんな負のスパイラルに陥るんです。そんな状況でいい製品なんてできるわけがない。2014年頃から売り上げが落ちているようですが、『やっぱりな』と思います。最盛期を築いた会長が社長に復帰してテコ入れするようですが、社員が今でもあのままだったら持ち直せるわけありません。商品を見直すより、社員教育をやり直した方がいいでしょうね」(同)
アパレルに限らず、新入社員の多くは入社した際、「勘違いはするな」と教えられる。その理由は、下請け業者が丁寧に接してくれるのは会社の看板があるからで、その社員個人の力ではないからだ。
H氏が言うように、ブランドの強化、売り上げ向上にばかり注力するのではなく、下請け業者とウィンウィンの関係を築ける、社員の人間力アップに目を向けた方がよさそうだ。
(KAZU)