セクハラで退職した女性3人の悲劇! 被害に遭った場合の対処法とは?
■酒席でのセクハラの後にパワハラも受けたユリさん
メディア業界には珍しく控えめな印象のユリさんは、幹部クラスにも人気があり、直属の上司である編集長とともに、よく酒席に誘われていた。しかし、酒席はセクハラがひどく、酔った幹部から胸などを触られることもあった。
「わりと名の通った会社に正社員で採用されて、親も喜んでいるので、辞めるなんてとんでもないことでした。でも、お酒の席だからガマンしようと思っても、イヤな気分になりますよね。それで酒席のお誘いを断るようにしたら、今度はパワハラで……」
やはり些細なミスで叱責されたり、無視されたりするようになったという。朝起きると手が震え、なかなか起きられない。出勤が苦痛でたまらなくなり、心療内科へ。女性医師の対応がよかったために心が落ち着き、退職を決意した。現在も求職中だが、夫に支えられて平穏な日々を送っている。
3人とも悩んだ挙げ句の決断だったが、形としては「自己都合退職」なので雇用保険の失業給付を受けられるまでに時間がかかり、給付制限もある。
「理不尽ですが、まあ授業料ですかね」
3人とも、今ではそんなふうに笑う余裕も出てきているが、釈然としないものがある。彼女たちは家族や医師の支えもあって別の道を選ぶことができたが、そうはできない例も多いのではないか。
■相談窓口や弁護士に相談を
女性の権利問題などに詳しい太田啓子弁護士は、「セクハラを受けた場合には、泣き寝入りしないで会社のセクハラ相談窓口や自治体の相談窓口(東京なら、東京都労働相談情報センターなど)に、すぐに相談することをお勧めします」と話す。
「弁護士への法律相談もためらわないでほしいです。月1回ですが、日本労働弁護団の『女性弁護士による働く女性のためのホットライン』という電話相談もあります。
上司から2人きりの酒の席への誘いを受けた時など、本当は断りたいのに『上司だから』と不本意ながら行くことはありますよね。でも、誘ったほうは『合意』と解釈して、さらに親密な関係に持ち込もうとするんです。このような『感覚のギャップ』の存在を男性側がわかっていないことが、セクハラの問題の本質だと思います。『イヤよイヤよもいいのうち』なんて幻想ですからね。女性が本当に嫌がっているケースがほとんどです」(太田弁護士)
セクハラを受けた場合、前述の3人のように、人に知られたり、被害を思い出すだけでもつらいと感じるのは想像に難くない。しかし、勇気を出して相談をする第一歩が、加害者の意識、ひいては社会の意識を変えることにもつながるのではないだろうか。
(蒼山しのぶ)