NPO法人Japan Hair Donation & Charity代表・渡辺貴一さんインタビュー

柴咲コウやベッキーもやっていると話題の「ヘアドネーション」 髪の毛をカットして社会貢献!?

2016/11/17 15:00
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NPO法人Japan Hair Donation & Charity代表 渡辺貴一さん

 柴咲コウや水野美紀、ベッキーなど、人気の女性芸能人が長い髪をバッサリと切り、寄付したことで一気に注目を集めたヘアドネーション。寄付された髪の毛で作った「フルオーダーメイドの医療用ウィッグ」は、病気や事故などが原因で頭髪に悩みを持つ18歳以下の子どもたちに無償でプレゼントされる。この活動が一般にも徐々に浸透しつつある今、ヘアドネーションの草分け的存在であるNPO法人Japan Hair Donation & Charity(通称:JHDAC、ジャーダック)の代表・渡辺貴一さんに、活動を始めた動機や意図などについて話を聞いた。 

■「もったいない」が始まり

 大阪で美容室を経営しながら、JHDACを運営する渡辺さんは、2008年、ビジネスパートナーと現在の店舗を立ち上げた時、本来、営利目的である美容室で、あえてそれとは逆の、お金儲けにはならないけれど世の中に役立つことをしたい――という考えで、ヘアドネーション活動を始めた。

 「せっかくの髪の毛がもったいない、今まで切って捨てていたものを何かに役立てたい――という美容師としての職業意識」と、動機について語る渡辺さん。また、当時ヘアドネーションを行っている美容室がなかったのもきっかけだそうだ。

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事務所に届いた郵便物は、開封後、手紙などと毛束とで仕分けされる

 08年から美容室のHPで「髪の毛の寄付を集めております」と表明、09年にはNPO法人化。ヘアドネーションの活動を綴ったブログも開始した。法人化前に送られてきた髪の毛は月に1~2束だったが、法人化後は週1~2束に。送られてきた髪の毛を撮影し、ブログにアップし始めると、寄付がさらに増加した。それでもひとつのウィッグを完成させるのに20~30人分の髪の毛が必要となるため、最初のウィッグを完成させるのに約2年半かかったそうだ。


 現在は郵便で届く髪の毛が1日100~150通にも上る。髪の毛を寄付する「ドナー」は日本に住む日本人にとどまらない。留学生、在日外国人や、海外に住んでいる日本人からも髪が届くという。

■震災と芸能人のSNSによって拡大

 美容室を営みながらの活動は忙しく、ヘアドネーションのPRに、あまりお金や時間を費やすことはできない。しかし、そんな状況でもJHDACに送られてくる髪の毛は増え続けている。渡辺さんは、ドナー増加の背景には、大きな2つの出来事と、世の中の流れの後押しがあるとみている。

 まず、11年3月11日の東日本大震災以降、寄付は急激に増加。

「やはり、あれほどの災害を目にして、皆さんの中に『誰かの役に立ちたい』というボランティアへの意識が高まったことは、自然な流れなのでは」


 また、昨年から今年にかけて、水野美紀や柴咲コウ、ベッキーといった芸能人がJHDACに髪の毛を寄付したことも、ドナー増加の追い風となったそうだ。

 柴咲は、昨年12月、美容室を通じて寄付した髪の毛の束の写真を、自身のインスタグラムにアップした。その投稿が多くの人にシェアされて広がり、JHDAC の活動はNHKのドキュメンタリー番組でも紹介された。

 社会を根底から揺るがし、人々の心に大きな影響を与えた震災、芸能人による寄付といった出来事に加えて、スマートフォンの普及とそれに伴うSNS文化の浸透という世の中の流れによって、今までボランティアに興味がなかった若い世代にも広く知られるようになったのではないか――と、渡辺さんは冷静に分析している。 

■髪の毛に同封された手紙から浮かぶ、ドナーの人物像

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取材当日も郵送ではなくわざわざ事務所まで髪を届けに来た人がいた。岐阜県から大阪まで4時間車を飛ばしてくる人も。それだけドナーの思いは強い

 髪を寄付するのはほとんどが女性だが、まれに男性もいる。年齢は下は3歳から上は60代まで。繰り返し、同じ人が寄付することもある。そして、事務所には、髪とともに手紙が同封されて届くことが多い。「一つひとつの手紙にドラマがある」と渡辺さんは言う。手紙には親や兄弟、友達など身近な人が病気であったり、さまざまな理由で頭髪を失ったり、闘病の末に亡くなったことなどが綴られていて、「自分には、もっと何かできることがあったんじゃないか?」という後悔にも似た想いが感じられるそう。

 もちろん「ちょうど切るタイミングだったので」という軽い気持ちで提供する人も少なくない。中には、夏休みの自由研究で髪を寄付する子どもも。また、今年の夏は、髪の寄付だけでなく、仕分けなどのボランティア体験をするために、関東、九州、シンガポールから20組以上の子どもたちが保護者とともに訪れた。

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